Q:川西市長が理想とする広報活動とリスクマネジメント活動はどういったものでしょうか? 考えをおきかせください。リスクマネジメントにしても、広報活動にしても、前提になるのは信頼を得るということだと思います。様々な行政活動や政策を進めますけれど、全員が賛成というのはあり得ない話です。特にこういう厳しい時代ですから、その前提にあるのは、意見は違うかもしれないけれど、市民のために誠実にやりたいという気持ちを持っていることを理解してもらう。これが広報活動についても、リスクマネジメントについても重要なんだろうと思っています。広報活動に関しては、情報公開。しっかりとした「ing」(今何をしているか)を伝えていくということだと思っています。できあがったものを見て分かってくださいというのではなく、こういうことが今動いているんだよ、こういうことに悩んでいるんだよとか、最適なタイミングで市民の皆さんに伝えていくことが、行政体として信頼を得ていく事に繋がると。リスクマネジメントについては、特に正確な情報を隠さないで、しっかりと「ing」を伝えていく。このことを1番大切にしたいなと思います。そのことが信頼につながると思います。Q:平成29年度に発生した交付金の申請誤りが令和元年度に発覚。どの自治体でも限られた職員で回さなければならない行政活動において、川西市での課題はどのようなものがあったのですか?発覚したのは翌年度。令和元年度に仕事をした同じ職員が、去年と数字が違うことに気づいた。改めて調べたら、前年の方が間違えていたということが分かった。ミスは許されないけども、それを隠さずにちゃんと上司に伝えた。その点に関して私はこの職員は誠実に仕事をしたという風に評価をしています。1つ1つのミスというのは、日々「ing」で起こっておりますが、それを隠さずにちゃんと伝えていって、それを共有していく。このことが当初はできていなかったと思っています。最大の課題はミスなどが共有されていないとか、個人の仕事になっていてチームでできていないとか、ノウハウが共有されていないとか。行政の仕事は想像以上に日々たくさんの業務をこなしていますし、人数も少ないので、どうしても目の前の仕事に追われてしまいます。全体的にこういう風なことを共有しようよ、という仕組みがなかった事だと思っています。Q:過去は課題の共有がされていなかったということですが、共有されていなかったのは業務でなのでしょうか、それともノウハウなのでしょうか。恥ずかしい話ですが、例えば人事異動の際に業務引き継ぎ書を作成しているのですが、部とか課によっても作るレベル感から何を残すかということも全然違うんですよね。たとえば課長が変わった場合は引き継ぎ書を作るんですが、人事異動がなかったら引き継ぎ書を作らない。その職員が突然いなくなったりすると、その職員の記憶の中にしかないものは記録として何も残らない。組織として情報やノウハウを継承していなかった。これを具体的に改めまして、引き継ぎ書は統一の形式で、人事異動のあるなしに関わらず、毎年業務の引き継ぎをしっかりとすると。その人事異動も3月大体25日とか、26日の週末になって発表するのが恒例でした。1週間でどうやって引き継ぎ書を作れというんだという状況もありましたので、1週間ぐらい前倒しして人事異動を発表するとともに、引き継ぎの統一化を図る、引き継ぎ時間をしっかりと取るということにしました。もう1つはミスの共有です。1つの部署であったミスは、直ちに「内部統制のリスク事案が発生しました」ということで、全ての事案を全課長以上で共有をしています。何かの算定誤りをしたとか、間違って郵送したとか、本来やらないといけない手続きを忘れていたとか。すぐ共有をして、全庁的にちゃんと見直すようにということができるようになったのかなとは思っています。Q:越田市長が就任されて、業務の標準化・見直しがかなり進んだということですね。そうですね。私もびっくりすることがいっぱいあるのですが、その仕組みを導入するまではきっと報告されなかったことも多かったのだと思います。数が見えてきたというのは、おそらく今までは内々で課の中で処理をしていてどの程度の数があったかすら把握できていなかった。大体どうやって対策を打つんだというと、「職員個人の努力で気をつけます」とか、「チェックを徹底します」とか、「再発防止を徹底します」って、すごく抽象的な誰でも言えることを行政は言う傾向にあります。少なくとも私に報告があるものに関してはそんな答えは全然求めていない。そのチェック体制を「2人でやっていたのを必ず3人でやります」とか、もうそれこそ「声を出して読みます」とか、「この取り組みはミスが多いのでやめます」とかですね。新たなミスは日々発生しているんですが、具体的なところで対策を作ることによって、同じこと(ミス)をできるだけ減らすということなのかなと思います。Q:数字でも見えてくるような形になったということですか?具体的なところで原因と言った時に、原因は4つぐらいのカテゴリーに分けられます。例えば自分が聞き取った時に「1. 聞き間違いをした」のか、「2. 正しく聞いたけど間違えて記憶をしてしまった」のか、「3. ちゃんと記憶をしていたけどアウトプットの時に間違えてしまった」のか、「4. 単に打ち間違えてしまっただけ」なのかとかですね。このうちのどの時点で間違えたのかと。記憶の間違いは知識が足りない事から起こっているのだったら、ちゃんと最初に研修しましょう、とか。みんなで間違ってるということをちゃんと理解しましょう、とか。なんとなく対策をやるというよりも、しっかりと言語化するということですね。具体的な言語として表現することを心がけています。Q:連携協定締結以前から、市長が就任されて以降、具体的に変革あるいは標準化をされながら、想定されるミスをリストアップしてその予防策を確認されています。そのうえで、広報活動やリスク発生時における情報管理体制について、外部の力を借りようと思われたのは何故ですか?私も広報広聴課と話をよくするんですが、どうしても目の前の仕事、具体的に言うと、毎月の広報誌を作ることに注力してしまう。その結果、言葉を悪く言えば、「広報かわにし」の編集部になってるんじゃないの?と私はずっと申し上げてきました。広報広聴課は何を伝えていくんだ、「ing」を伝えていくんだと。広報誌というのは手段ですから、そのツールの1つをどうするかではなくて、様々なツールをどう使うかと。そもそも、私たちは誰に何を伝えるんだということを、1から戦略的に取り組まないといけないよ、と。じゃあ、それを行政だけで作れるんですか?と。行政だけでは作れないので、なんとか民間のお力をお借りしたいと。Q:外部の力が必要と考えられた際に、多くの企業や弁護士事務所・コンサルティングファームが有る中で、Dayzを選んだ理由は何だったのでしょうか? 他にも複数のコンサルを検討されたりもされたんですか?元々官民連携という切り口は非常に多く、広報広聴課だけで官民連携を募集するというよりも、川西市の困っているコトリストですね。こういうところで民間の力を借りたいんだというところの間口の中でDayzさんとの出会いがあったということです。広報戦略作りのコンサルがあるかもしれないですけれど、なんかパッケージで、川西市を○○市に変えたらまた使えます、ということではなく、Dayzさんに関しては、一緒に戦略を作ろうと。一緒に寄り添っていただいて、ある種オーダーメイドで私たちは作っていただいたなということ。同時に、今までは(戦略を)作るコンサルさんと実行する外部の方がもう別々なので、全く繋がってないんですね。Dayzさんとは連携協定という形をとらせていただいたことによって、戦略を作るところから、実態的にどういう風に動いていくのかまでしっかりと伴奏していただいているという形です。そういうことを期待して、Dayzさんと一緒にやりたいなと私自身は感じてました。お話し合いをさせていただいて、戦略を作ったりするのと一緒に伴奏させていただく中で、 Dayzさんは我々にとってしっかりサポートしていただける、連携できるパートナーなんだという思いに至り、連携協定を締結させていただいたというイメージです。広報戦略には出てこない心の内を分かっていただいたっていうのは、非常に大きな時間だったなと思います。Q:連携協定締結に際して、Dayzに最も期待したことは何ですか?もちろん最終的に実行するのは私たちです。行政のコンサルティングって多いのは、実際にコンサルティングをしているコンサルタントは決して多くないというイメージ。言葉が悪いんですけど、計画の冊子を作るコンサルティングとかっていうのはあるんですが、ほんとに私たちが悩んでいるところに対して、サジェスチョンをしていただけるコンサルティングって貴重だと思うんですよね。冊子を作ることはできるんですが、一緒に政策を作るとか、判断の時にサポートをしてもらえるっていうところって。特に広報のようなところというのは、日々変わる状況に対して常にアドバイスをしていただけると有り難い。もう戦略はできていますので、なんか作成というよりも、我々が最終決断をする時にどういったことが足りなくて、例えば、民間企業だったらこういう切り口があるんじゃないかとか、ここを大切にしましょう、とか、これを言ってはダメですよとか、このラインを守りましょう、とか。そういったことをサポートしていただける。ある種広報としての常道の型をたくさんお持ちですので、そこの基本を我々が外さないようにしっかりとアドバイスをいただける。ここが非常に大きいですし、これからも隣にいていただけるというか、遠隔ですけれども、常に我々のそばにいていただける存在であるということに非常に期待をしています。Q:協定締結からほぼ1年が経過しました。連携協定締結後、具体的な成果や効果、締結後の職員や現場に変化は有りましたか?協定の中での我々の成果というのは、それこそ不祥事とか事業を起こす時もそうですけれど、特に不適切な事象とかがあった時に、まず広報も含めて協議をしようと。協議するというと、失敗した事業部署とせいぜい議会対策で総務とかが入るのが一般的なんですけど、我々はかなりの部分で、何かミスやこういう出来事があると、広報が協議に一緒に入る。少なくとも広報に一言ちゃんと知らせておく。これが鉄則になっています。恥ずかしい話なのであまり言えないんですけれど、数年前に市の特別職がハラスメント行為で解任をされるということがありました。しかも報道されるということもあったのですが、当時の広報担当課長にはその状況を知らされていなかったということですので、当然マスコミの方から問い合わせがあった時に、ほんとに知らないんで知らない対応をした。正直もうマスコミの方との信頼は、そこでかなり厳しい状況だったということはお聞きしています。もちろん、幹部限りのトップシークレットで動かないといけないことはあるんですけれど、あらゆることに対して広報の担当がしっかりとそこを把握しているという状況がなかったら初動を間違える。今では初動から広報は認識をしておこう、広報はどういうふうに伝えていこうかということを考えながら動くという、そういったことができているんではないかなと。あとは色々一緒に進める中で、外部からまた新しい編集やデザイナーを候補に入れたり、PR TIMESさんでできるだけ報道したりという、そういった細かいツールも色々ご提案いただく中で我々も増やしてきたというのはあります。しかし1番の成果は、良いことも悪いこともしっかりと広報に伝えてやっていこうという、その意識付けが1番大きいんじゃないかと思います。Q:そういう意味では、リスクマネジメント上の広報の位置付けというのが、市の中でも変わってきたということですか?そうですね、やはりいかにお伝えをしていくのかという、そこがなかったら、同じことをしてでもですね。発信の仕方を間違えたことによって、我々にとっても非常に大きな損害があると。最初にちゃんとした発表をして、ちゃんと対策をお伝えすることができたら、市民の方が理解をいただけることも、そこを間違えることによって、市民の皆さんからのご批判をいただいて、そのことの対応とさらに厳しい対応を求められてしまうと。ちょっと戻ってしまいますけれど、平成29年の広報の誤りについては、私もちょっと反省しています。私は記者会見は自分でする派ですが、当時は庁内では市長に頭を下げさせたらいけないという発想で、担当部署が対応していたんです。そうすると、質疑に答えられないことがあり、マスコミの方や市民の方からかなり厳しいご批判をいただいたんです。だから、私が出ることによって、そこで対策を発表することによって、市民の方には、かなりご理解をいただいたという経緯もあります。初動を間違えることが市の信頼を失って、かえって職員を傷つけることになりますので、Dayzさんにはずっと我々のアドバイスをしていただける存在であっていただきたいし、そこが重要な問題だと思います。Q:1年間一緒に仕事をさせていただいて、今後どういったことを市長の方からは期待されてますか。私たちの今回のテーマ、「ing」をちゃんと伝えるということ。みんなが広報で、みんなで広報していくんだという、そういった意識付けというのがまだまだ我々には不足しています。正直、広報広聴課のマインドもめちゃくちゃ変わりました。広報誌を作るだけが仕事ではない。マスコミへの対応、どういったものをどのタイミングで出すんだというレベルから、しっかりと広報が政策的に関わっていくんだという意識を持った部隊に変わったという風に私は思います。ただ一方で、こうやって頑張ると職員たちはみんな広報広聴課任せになりますので、その戦略をいかに全体組織に浸透させていくのか。私たちだけではノウハウが足りない部分もありますので、具体的にどういう風な対応をしていったらいいんだろうか、と。そういう意味で連携協定ですから、個別の何々契約書ということではなく、我々のほんとに良きアドバイザーとして、私たちが悩んでいること、迷っていることに対してアドバイスをいただいたり、場合によったら頑張れって後押しをしていただく。あってるあってるって言っていただくだけで、自信を持って広報の担当も私たちも進むことができますから。そういった存在であっていただきたいなって思っています。お気に入りの飲み屋さんと一緒ですね。これからDayzさんがご活躍いただくと。あのお店いいよねっていうとこっていうのは、「俺、最初の客やねん」っていう自慢ができると嬉しいんです。いつ行っても私が入る1席分ぐらいは空けといてもらえへんかったら、 並んで入られへん日があったら嫌やなという。お気に入りの飲み屋というのは、そういう気持ちだということで。あの飲み屋のこの角の席は、川西市の場所ということで確保していただけたら嬉しいなと思います。他のインタビューを読むレスポンスも非常に早くアドバイスも的確。課題だった広報戦略がまとまり、全庁で広報の重要性が理解されてきました。 —— 兵庫県川西市 西川様