1995年の阪神淡路大震災、2011年の東日本大震災という2つの巨大地震を経験し、企業は大地震を想定した建物の耐震化やBCPの策定を進めました。ところが、ここ数年大きな被害が発生しているのは、数十年に一度という規模の豪雨によるものです。山間部の土砂災害や河川の氾濫、それに伴う家屋の浸水や損壊などだけでなく、下流部の大河川の氾濫、河川から離れた場所での内水氾濫と、豪雨による被害は大規模、広範囲にわたっています。大河川の堤防決壊・氾濫多くの企業は都市部・平野部にあるため、山間部で発生する土砂災害や土石流の被害に直接遭うことはないでしょうが、山間部の豪雨による河川の氾濫被害は想定する必要があります。記憶に新しいところでは2019年の台風19号上陸に伴う豪雨で多摩川はじめ多くの河川が氾濫し、千曲川の氾濫ではJR東日本の新幹線車両基地が水没するなど人的被害も含め甚大な被害が発生しました。また、2011年のタイの洪水では氾濫したチャオプラヤー川の水が下流部へ徐々に広がり、多くの工業団地が2カ月以上にわたって浸水し、トヨタ・HONDA、ソニーやニコンなど多くの日本企業の工場も操業停止に追い込まれました。世界的なサプライチェーンに影響を及ぼした洪水として記憶されています。2020年の「令和2年7月豪雨」では熊本県の球磨川の他にも大分県の筑後川上流、岐阜県の飛騨川、長良川などの一級河川も氾濫し、大きな被害を出しています。もし、荒川や江戸川が氾濫すれば首都圏の広い範囲が冠水し、タイの洪水を上回る被害も想定されています。都市部で頻発する内水氾濫「令和2年7月豪雨」では福岡県久留米市や大牟田市など、近くの筑後川は氾濫していないのに広い範囲で冠水被害が発生しました。降雨量が地域の排水能力を超えてしまったためです。広範囲の豪雨でなくても、局地的・短時間に降るゲリラ豪雨の際にも排水能力が追いつかず、周囲があっという間に冠水したというニュースが珍しくなくなりました。東京23区でも度々発生しています。盆地や低地だけでなく、平地のオフィス街や住宅地でも突然冠水被害に遭う可能性があります。改定が進むハザードマップ平成27年(2015年)の水防法改正により、国、都道府県又は市町村は想定し得る最大規模の降雨・高潮に対応した浸水想定を実施しハザードマップを改訂する事となりました。加えて、2019年の台風に伴う豪雨被害で内水氾濫が各地で発生したことを受け、国土交通省は「洪水ハザードマップ」に加え、「内水ハザードマップ」の作成を指示しました。各自治体では改訂作業が進められていますが、まだ全ての自治体で改訂が終了してるわけではなく、4割の主要市区で改定が間に合っていない状況です。豪雨ハザードマップ、4割の主要市区で改定終わらず 浸水区域の指定遅れで:日本経済新聞(2021年1月25日閲覧)そのため、例えば昨年ハザードマップを参考に水害への対策を策定していたとしても、これからハザードマップが改訂される可能性もあり、洪水・内水2つのハザードマップを確認する必要もあります。最新のハザードマップでチェック改訂が進むハザードマップですが、チェックするタイミングで被害想定が変わっていることもあります。自治体が発表するハザードマップの更新情報は細かくチェックする必要があります。ハザードマップポータルサイト冠水想定地域であれば、想定される浸水深がどのような被害を及ぼすか速やかに検証しましょう。そして、どのような対策ができるか、必要かの検討を進めてください。