2020年、福井県にある敦賀原子力発電所2号機について、日本原子力発電が断層のデータを一部改ざんした疑いがあると原子力規制委員会が指摘しました。原電の無断書き換え・削除80カ所に 敦賀2号機資料 規制委、影響議論へ:毎日新聞(2021年2月5日閲覧)2号機の原子炉建屋の直下には、活断層が存在している可能性があり、審査の結果、規制委が活断層と認定すれば廃炉になることから、データを改ざんしたのではないかという疑いです。 この日本原電の改ざん疑いはまだ結論が出ていませんが、過去にはデータや書類の改ざん・不正の隠蔽が大きな問題になった事例が数多くあります。近年ではスルガ銀行の不正融資(シェアハウス「カボチャの馬車」オーナーに対する融資に際し、不動産会社により割り増された不動産価格を知りながら、あるいは不正行為を能動的に働きかけて改ざんを促す事例や、行員自ら改ざんを行った事例も認められた)やレオパレス21の施工不良問題(界壁を間引くなどの建築基準法違反物件が1万7000棟以上。会社は施工不良を認識していた)、東芝の不正会計問題が思い出されます。粉飾決算も組織ぐるみのデータ改ざんです。当社に対する行政処分について:スルガ銀行(2021年2月5日閲覧)また、東京医科大学が入学試験の点数を改ざん(入学者における女性比率を低く抑えるために、女性受験生の点数を下げた)していたことが明るみに出たときには、改ざんという行為そのものだけでなく、その目的が大きな批判を受けました。問われる公表数字の正確性データや書類の改ざんは簡単にできてしまう不正行為です。数字や文言を書き換えるだけですから証拠も残りにくく、発覚するのは内部告発やデータの整合性に疑問が発生するなど限られたケースです。カボチャの馬車やレオパレス21の場合は、社会問題化してその背景を調査・取材する課程で不正行為の存在(組織的な不正隠蔽)が明らかになりました。身近な数字では、各種の統計資料や調査結果のデータがありますが、あまりその数字を疑うことはありません。テレビの視聴率は第三者であるビデオリサーチが調査して発表していますが、雑誌や新聞は発行元が「公称部数」として発行部数を公開しています。視聴率や発行部数は媒体(広告)価値に影響するので、できるだけ大きくしたいものです。そのため、かつては公称部数と実部数(発行部数あるいは実売部数)が大きくかけ離れているケースも多く見られました。トランプ大統領の就任式に集まった人数では、大統領が150万人以上はいたと主張し、メディアの25万人程度だったとする報道を批判しています。雑誌や新聞などの印刷媒体離れが進み、ネットメディアが急速に普及しています。ネットメディアも利用者数(ユニークユーザー数やアクセス数)やアプリのダウンロード数が重要な意味を持ちます。各媒体社から発表されているこれらの数字も実際の数字なのだと信じるしかないのですが、もし実態とかけ離れた数字を発表していてその事実が明るみに出たら一気に信用を失うことになります。プレッシャーが改ざんのきっかけにも組織ぐるみでの改ざん、隠蔽だけでなく起こりがちなのが現場での改ざんです。上司や数字、締切などのプレッシャーから逃れるために、悪いことと知りながらデータを改ざんしてしまうケースもあります。スルガ銀行の不正融資も、そのような数字のプレッシャーから融資先の預金額や資産状況を改ざんして融資条件をクリアしたのが始まりかもしれません。あるいは、上司やクライアントに忖度して都合の良い数字や喜ばれる数字に書き換えることがあるかもしれません。このような改ざんは客観的に不合理な証拠が出てこない限り本人しか知りえません。それだけに、後にその改ざんが発覚し問題が発生したときのインパクトも大きくなります。改ざんや不正を許さない企業風土を組織ぐるみの不正はいずれ発覚するものです。今は公益通報者保護法などの整備もあり、内部告発による訴えも増えるなど監視の目が厳しくなると共に発覚後のダメージも大きいことから、不正をするデメリットの方が認識されるようになってきました。しかし、現場の一人の従業員による改ざんは見つけることは困難です。改ざんをしない、させない企業風土の醸成が重要です。