昨年は阪神淡路大震災から25年、そして今年は東日本大震災から10年という節目の年となります。大きな災害が発生すると、あるいは過去の大災害の節目の年や発生日に慰霊イベントが開催されそのような報道を目にすると、同じ災害が発生したらと自社や我が家の備えを振り返ることになります。対岸の火事を自分事としてこれまでも災害や大きな事故発生、あるいは企業不祥事などのニュースに触れた時に、思い出したように慌ててBCPや自社の備えを見直しているのではないでしょうか。日本は地震大国でもあり、建築基準法で耐震強度を規定しているので新しい建物は大地震が襲ってもある程度耐えられます。しかし、東日本大震災ではこれまではほとんど備え(リスクとして意識され)てこなかった巨大津波により多くの人命を失い大きな損害を被りました。この津波被害により、原子力発電所の安全基準は見直されることになり、東日本の沿岸部には巨大な防波堤が作られたり土地のかさ上げ工事をしたり、町ぐるみ高台に移転したりと想定外を無くす(リスクとして備える)対応に追われています。同様に、巨大台風や豪雨災害も珍しくなくなり、そのたびにハザードマップを確認したり防災用品の確認や買い増しを迫られています。個々の対策で突き当たる壁本来は定期的に見直すべきBCPですが、これまでとは違う災害が発生した場合などは慌てて中身を見直し、改変にかかるところも多いでしょう。しかし、一度見直すとそれで安心し、また次の災害が発生するまで暫くはほったらかしにする、の繰り返しではないでしょうか?日常の業務上発生したトラブルも、二度と同じことが起きないようにと作業フローや対応マニュアル、業務の見直しを行います。しかし、災害やトラブルの度に付け焼き刃的な見直しをしてリスク削減を目指していても、いずれ合成の誤謬に突き当たり新たなリスクを生じさせることにもなります。BCPは災害やトラブル発生時でもビジネスを継続するための準備プランです。しかし、広範囲に及ぶ大きな自然災害の場合は、ビジネスの継続よりも優先すべきことがあります。従業員やその家族の命は何ものにも代えられません。お客様からの信用もお金では買えません。何を一番のリスクと考えるか?自然災害だけでなく、ビジネスには様々なリスク・トラブルがついてまわります。今年に入ってからも、新型コロナ感染症のクラスターが事業所内で発生したり、工場や作業現場で事故や火災が起きたり、重要な技術情報が漏洩したり、官僚との不適切な飲食が問題になったり、更には非常事態宣言発出で大幅に売り上げが落ちた業種も沢山あります。自社に置き換えて考えると背筋がぞっとするようなこともあるはずです。目の前に起こった災害やトラブルに順番に何も考えずに対応しているだけだと、複数のことが同時に発生した時に優先順位をつけることができません。優先順位を誤った判断、対処をしていまうと、ことが終息した後にブランドや会社の信用を大きく毀損することにもなりかねません。リスクに備えるには、企業として守るべき物が何であるかを全員で共有することが第一です。「社是」や「ミッションステートメント」として明確になっていればそこに立ち返れば優先順位は決められます。もしも明確に言語化されていないのでしたら、まずはそこから始めましょう。今はSDGsやESGといった視点からも齟齬のないものでなければなりません。リスクに備える→リスクデザインは、自社の立ち位置を明確にし、ブランドデザインをすることでもあるのです。