度々問題になる国家公務員への接待疑惑。今年は菅義偉首相の長男が関与した総務省幹部への接待問題が明るみに出るなど、政官界と経済界との会食や接待疑惑が次々に問題となっています。公務員は、その職務に関し賄賂を収受・要求・約束したときは、収賄罪として5年以下の懲役に処せられます(刑法197条)。会食の費用を誰が払ったのか?その場でどのような話がなされたのかが問われています。接待は当たり前だった昭和かつては国家公務員との飲食・接待は、特別に高額でなければ問題になっていませんでした。飲食だけでなく、ゴルフや麻雀なども普通に誘い合っていました。50代の人なら、国家公務員への接待と聞くとバブル崩壊後日本が長い不況にあえぐ昭和の終わり、1998年に発覚した旧大蔵省(現財務省)と銀行との癒着を思い出す人も多いかもしれません。銀行を監督する大蔵省のご機嫌をうかがい、検査日の情報を聞き出したり折衝するMOF(大蔵省:Ministry of Finance)担と呼ばれるエリートサラリーマンが、大蔵省の職員を接待漬けにし逮捕者まで出した接待汚職事件です。主に接待に利用されたお店も注目され、ノーパンしゃぶしゃぶ事件とも言われました。銀行・証券業などの金融監督部局が切り離されて金融庁となり、大蔵省は財務省に再編されるきっかけとなった事件です。そしてこの事件はもう一つ大きな変化をもたらしました。国家公務員倫理法の制定です。この事件をきっかけに、国民からすれば金額の多寡ではなく接待を受けること自体に問題があるのではないか、公務員として公正性を欠くのではないかという不信感や疑念が湧き上がりました。公務員に求められる倫理規程の制定そこで制定されたのが、国家公務員倫理法の政令「国家公務員倫理規程」です。国家公務員だけでなく公職・中立公平性を求められる職に就く「みなし公務員」や「準公務員」もこの倫理規定の遵守を求められます。地方自治体では、この倫理規定に準じてそれぞれの公務員倫理規定が制定され、地方公務員は同じく規定遵守を求められます。「国家公務員と関わりのある事業者の皆様へ」というリーフレットにわかりやすく整理してありますので参考にしてください。事業者用広報資料:人事院時代劇では悪代官が悪徳商人から酌を受け、小判が敷き詰められた菓子折を受け取るような場面がよくありました。現代ドラマでも、大臣が料亭の上座に座り、接待をされる場面がよく描かれますが、あれはどうなのでしょう?ここで描かれているのは許認可に関わる約束の取り付けです。接待を超えた、いわゆる贈収賄の現場です。今時こんなドラマのようなあからさまな贈収賄の場面はないでしょうが、何か贈り物をする事はあるでしょう。それが見返りを期待しての物でなくても賄賂と受け止められる可能性もあります。賄賂とは、公務員の職務に対する不法な報酬としての利益をいい、金銭や財物はもちろん、金融の利益、家屋の無償貸与、接待・供応、債務の返済なども賄賂となります。民間企業であっても、職務権限に絡む贈収賄で懲戒解雇や逮捕に至ることもあります。問題となる接待の当事者の多くは、昭和の接待を経験した世代です。平成以後に社会人になった世代では、接待・贈答ルールを定める企業が増加し接待自体が減ってしまいました。一定金額を超える接待・贈答については、贈賄と疑われたり、贈賄に該当するリスクも高くなります。親睦を深めることや情報交換を目的とした「会食」としている場でも、職務権限に関する業務の話をすることは問題視されます。今後も、いつ利害関係が発生するかもわからないので、同級生など旧知の仲であっても公務員は基本的に割り勘を貫くことがほとんどです。そのため、県庁や市役所など地方自治体の庁舎や役場近くには数千円で飲み放題できる居酒屋など、職員が安心して飲食できる御用達の店が存在しているものです。気軽な会食や情報交換ならそのようなお店で会い、割り勘で良いでしょう。公務員に厳格な倫理規定が適用されるように、これからは民間企業でも接待・贈答ルールを定めて運用することが求められます。