かんぽ生命保険の不正販売問題が世間を賑わしている頃、日本郵便では内部通報に端を発したパワハラが明らかとなりこちらも世間の注目を浴び、ネットでも炎上する事となりました。事の始まりは2018年、日本郵便本社の内部通報窓口に寄せられた内規違反の告発でした。その内規違反を犯したのが日本郵便の統括局長の子息だったことから、父親による通報者の犯人捜しが始まります。統括局長は通報したのではと疑う郵便局長数人を一人ずつ呼び出し、「俺の力があれば誰が通報したか必ず分かる」「局長だったら絶対につぶす」などと脅し、通報を認めるよう迫りました。恫喝とも受け取られるような詰問(2019年1月24日に録音)の音声が朝日新聞に寄せられ、4月28日に公開されています。「絶対潰す」に震える局長 録音示す日本郵便の「風土」:朝日新聞(2020年4月28日閲覧)%3Ciframe%20width%3D%22560%22%20height%3D%22315%22%20src%3D%22https%3A%2F%2Fwww.youtube.com%2Fembed%2FyFrSunOkTrE%22%20title%3D%22YouTube%20video%20player%22%20frameborder%3D%220%22%20allow%3D%22accelerometer%3B%20autoplay%3B%20clipboard-write%3B%20encrypted-media%3B%20gyroscope%3B%20picture-in-picture%22%20allowfullscreen%3E%3C%2Fiframe%3E動画は74万回以上視聴され、1400以上のコメントが付いています(2021年4月現在)。その後、疑いをかけられた郵便局長らは会議で問題提起をしたところ、他の幹部からも圧力をかけられ、降格や辞任要求を繰り返され休職に追い込まれるなどします。そして2019年10月、疑いをかけられるなどした郵便局長7人は、損害賠償を求めて提訴しました。内部通報がなぜ伝わった?そもそも郵便局長を呼びつけた統括局長は、内部通報をどうして知ったのでしょうか?報道によると、日本郵便のコンプライアンス担当役員が、内部通報があったことを統括部長に伝えたためのようです。その際、通報者名は伏せていたので犯人捜しが始まったのです。厚生労働省のウェブサイト「公益通報者の保護」には公益通報者保護制度は、国民生活の安心や安全を脅かすことになる事業者の法令違反の発生と被害の防止を図る観点から、公益のために事業者の法令違反行為を通報した事業者内部の労働者に対する解雇等の不利益な取扱いを禁止するものです。とあるとおり、通報者に不利益が及ばない、保護するとうたっています。朝日新聞の記事には、内部通報制度を従業員に広めるために配られた日本郵便の内部通報カードも写真付きで紹介されています。カードには「通報を行ったことにより、通報者が不利益を被ることはなく、通報者の秘匿性は担保されます。通報者を特定する行為をした者は、厳正に処分されます」と明記してありますが、見事に裏切られた訳です。公益通報者の保護│厚生労働省かんぽ生命保険の不正販売問題の時にも内部通報制度が機能しなかったと指摘されています。通報者の保護よりも身内の結束を優先させ顧客や従業員の声は二の次、三の次という体質を改めるのはそう簡単ではないと示しているようで怖いものがあります。何かと話題に事欠かない日本郵政グループですが、これから本当に内部通報制度が改善され機能するようになれば、今後どんな不祥事が明らかになるか戦々恐々としている人がたくさんいるのかもしれません。必読の公益通報者ハンドブック消費者庁が作成した「公益通報者ハンドブック」は「公益通報者保護法」の内容について詳しくわかりやすくまとめられています。ハンドブックには「国民の生命、身体、財産その他の利益の保護にかかわる法律」に違反する犯罪行為又は最終的に刑罰につながる行為が生じ、 又はまさに生じようとしている旨を通報する必要があります。とあります。その対象となる法律として462もの法律が示されています。公益通報ハンドブック横領や不正だけでなく、パワハラやセクハラなどのハラスメント行為、あるいは事故が予見できるのに何もしないという不作為でさえもこれらの法律に違反あるいはこれから問題となりそうだったら通報する必要があるとしているのです。日本郵政グループのように、内部に通報窓口があっても通報者が保護されないとなると、権限のある行政機関やその他の事業者外部(報道機関や消費者団体など)へ通報され、会社全体が寝耳に水、青天の霹靂という事態に陥りかねません。「公益通報者ハンドブック」をダウンロードし、管理部門などで自社の仕組みをチェック、対応の仕方に問題はないかなどを振り返り、また全従業員にも公益通報者保護法について勉強会をしてみてはいかがでしょうか。「そんなことをしたらやぶ蛇だ」と思ったとしたら、まさに改善すべきことがあるということです。