「トラブル」が起きてからでは遅い企業を取り巻くリスクはさまざまなものがあります。自然災害や不測の事故、サイバー攻撃や最近では新型コロナウイルスの感染拡大など外的要因での危機に留まらず、情報漏洩などの不祥事やハラスメント、ソーシャルメディアでの炎上など幅広い分野での危機管理が求められています。すべての企業において、このようなトラブルが起こる可能性はゼロではなく、ある日突然訪れます。このような「もしも」の事態が発生した時に適切な対応が取れないと、企業の存続を危うくする事にも繋がりかねません。危機発生時においては初期対応が重要ですが、中でもあらゆるステークホルダー(顧客、株主、取引先等)に対して情報を一本化して発信する窓口となる広報は、その後の危機の収束に向けて大変重要な役割を担っています。広報の初動遅れや不正確な情報の発信が二次被害を生むだけでなく、ステークホルダーの信頼低下やブランドイメージの失墜、株価下落などの社会的・経済的損失につながりかねません。冷静かつ迅速に対処するための備えが「クライシストレーニング」です。過去の事例から学び、自社にあったマニュアルを作成するクライシストレーニングには以下のような方法と目的があります。過去の事例から適切な対処方法を学ぶトラブルに1つとして同じ事案はなく、解決方法にも明確な答えはありません。過去には、適切な説明責任を果たさず社会的問題に発展したり、記者会見の失敗によって大きな批判を受けたりしたケースもあります。過去の事例から適切な対処方法を学ぶとともに、自社に起こりうるリスクを想定し予防策を考えます。シミュレーションを通して自社の危機管理マニュアルを作成する社内でトラブルが発生したことを想定して、具体的なアクションをシミュレーションします。危機的事態に陥った際には、重要な意思決定が短時間で求められるほか、対処方針の決定や記者会見実施の有無、社外への情報開示などをスピーディに進めなければなりません。有事の際の役割分担や意思決定プロセスを明確にしマニュアル化することで、もしもの際の素早い初期対応につなげます。広報は「情報のハブ」として、社内外の情報の橋渡し役に常日頃から情報を収集し、社内外へ情報を発信してステークホルダーとの良好な関係性構築を目指す広報。いわば企業と社外との「情報の橋渡し」を担っています。危機管理広報においても、正確な情報をすばやく集約し、迅速な対応を促す役割が求められます。情報ハブとしての広報に求められる主な役割は以下の4つです。情報の把握・共有社内から正確な情報をすばやく拾い上げ、経営陣に共有し速やかな意思決定をサポートします。状況に応じて調査チームを立ち上げ、事実関係を調査する場合もあります。社外への情報発信発生事象の事実関係や対応方針、企業の公式見解などをプレスリリースなどで発信します。場合によっては記者会見の実施も検討します。マスコミ対応事実に基づき、記者からの質問や懸念点に対して丁寧に対応します。この際、情報集約と回答の一貫性を図るため、取材対応窓口を広報に一本化することが望ましいでしょう。誤報チェック報道記事やSNSで事実とは異なる誤情報が広まってしまう場合もあります。二次被害や風評被害を防ぐため掲載を細かくウォッチし、間違った報道はすみやかに訂正します。経営陣を巻き込み、不測の事態にも強い組織に企業として十分な説明責任を果たし、ステークホルダーの不安を払拭して信頼回復につとめるためにも、誠実な対応が求められる危機管理広報。しかし、多くの企業では広報の人的リソースが限られ、日々の業務を優先して危機管理への備えが疎かになってしまうことも少なくありません。企業として不測の事態に適切に対処するためにも、経営陣にも危機管理の重要性を共有し、日頃から備えておくことが大切です。