9月1日は「防災の日」です。言うまでも無く9月1日は1923年(大正12年)の関東大震災が発生した日であるとともに、立春から数えて二百十日にあたるこの時期は、コメ(稲)の開花時期でもあり台風の襲来の多い時期とされてきました。「防災の日」は、「災害への備えを怠らないように」との戒めも込めて制定されました。東日本大震災が発生して以降は、その後の復興状況を伝える報道などもあり3月11日に防災や災害についての振り返りをする事も多くなりましたが、近年毎年大きな被害をもたらす大雨や台風などの自然災害による被害は夏から初秋に集中します。コロナ禍での働き方改革やオフィス縮小、移転を検討中の企業も多いと思われます。「防災の日」を機に、自社の災害への備えについてチェックしてみましょう。自然災害の直接被害を避けるための備え大きな被害をもたらす自然災害としては、地震、津波、台風、豪雨、豪雪、竜巻、地滑り・崖崩れ、干ばつ(小雨)、強風などがあります。視点を変えて被害をもたらす原因を大きく分けると(1)地盤(地面)が動く、(2)大量の雨(または雪)、(3)強風となります。自然災害の被害を避ける方法としては、災害に遭わない場所を選ぶか、災害が発生した時に被害を最小限に留めるための備えをすることです。地震大国日本ですから、どこにいても地震が発生する可能性は0ではありません。それでも、発電所や工場など被災時の影響が大きく及ぶ重要施設は、地震の発生確率が高い活断層近くは避けて建設します。オフィスビルや商業施設は人が集まる場所、交通の要所など地盤よりも優先する要素があり、建設場所に自由度がありません。そうすると、地面が揺れても建物が揺れない対策が必要です。強い岩盤に杭を打ち、免震構造や耐震構造の建物を建てます。近年の高層建築物は多くが免震構造となっています。大地震が発生し、液状化現象で地面が沈下した後に、地面から随分上に浮いたようになった建物や構造物が見られますが、それらはしっかり岩盤に杭を打ち、耐震構造で建てられた物です。オフィスの移転先を探す際には、建物の構造もしっかりチェックして選びましょう。建物は構造的に大丈夫でも、揺れれば物が落ちたり倒れたりは避けられない部分もあります。特に柔構造の超高層ビルは、揺らすことで建物への衝撃を吸収しようとしていますので、上階に行くほど左右に大きく揺れることがあります。また、長周期振動の影響で大きく揺れることもあります。高いところに重い物や壊れやすい物は置かない、不安定な物はしっかり固定するようにしましょう。特に大型コピー機のキャスターロックは忘れずに。水害に遭わないためには、まずハザードマップのチェックです。「ハザードマップポータルサイト」の「重ねるハザードマップ」では、洪水・土砂災害・高潮・津波のリスク情報、道路防災情報、土地の特徴・成り立ちなどを地図や写真に自由に重ねて表示できます。また、「わがまちハザードマップ」は各市町村が作成したハザードマップへリンクしていますので、事業エリアのハザードマップをダウンロードしてチェックしましょう。ハザードマップで危険とされた地域は早急に対策を検討し(特に土砂災害)、川の堤防決壊や内水氾濫で浸水・冠水の危険がある場所なら、安全な所に移転するか重要な物はハザードマップに表示されている想定水深よりも高いところに移す必要があります。都市部のゲリラ豪雨などによる内水氾濫では、駐車場や電源設備を地下に置いている建物では浸水を防ぐために、防水・止水板の設置や土嚢の準備も必要です。強風に対する備えは基本的には建物の構造・強度の確保に尽きます。特に開口部(窓や扉)の強度が重要です。窓ガラスは破片が飛散しない合わせガラス(一般住宅の防犯ガラスは合わせガラスの応用です)であれば安心です。屋外に不必要な物や風に飛ばされるような物を設置しない、置かないことも重要です。強風で飛ばされた看板や植栽が倒れて歩行者や車に当たるなど他者を傷つけることがあるので、これらのメンテナンスも怠りがないようにしましょう。IT化が進むオフィスで忘れてはならないこと大きな自然災害発生時には、水道・電気・ガス・通信などのインフラが寸断されて復旧に時間がかかることもあります。特に企業活動に影響が大きいのは停電です。工場や病院、大型商業施設などは非常電源や自家発電施設を持っているところも多いですが、オフィスビルの場合はまちまちです。仮にビルが非常電源を持っていても切り替わる間に瞬断は避けられません。無停電装置を備えていないデスクトップパソコンは電源が落ち、作業中のデータは失われてしまいます。また、バッテリー駆動のノートパソコンやタブレット、スマートフォンは短時間なら停電の影響からは逃れられますが、通信インフラに障害が出るとクラウドやホストサーバーとのアクセスができなくなり、業務の継続は困難になります。クラウドのデータに複数の人が同時にアクセスしながら進めるような作業だと、通信状況の混乱はクラウド上のデータの混乱にも繋がります。停電時のクラウドへのアクセスルールなども決めておく必要があります。IT化が進んだ企業活動では、停電発生を想定した備えは必須です。「コロナ禍の防災の日に考える、企業にとっての災害への備え その2 命を守る編」はこちら