9月1日は「防災の日」です。「防災の日」を機に、自社の災害への備えについてチェックしてみましょう。「コロナ禍の防災の日に考える、企業にとっての災害への備え その1 事業基盤編」はこちら命を守り二次災害を避ける備え災害発生時、あるいは台風接近時などに多くの人が一斉に帰宅しようとすると、更なる混乱を招くことがあります。東日本大震災の時には東京でも公共交通機関が全てストップし、都心から郊外に向けて大渋滞、歩道は歩いて帰宅する多くの人で歩行も困難な状態となり、帰宅困難者も発生しました。大型台風接近時の鉄道の計画運休では、運休前に帰宅しようとする人が駅に押し寄せ混乱しました。大地震や巨大台風、洪水などが発生すると、建物やオフィスは無事でも外に出ると危険であったり、あるいは交通網の寸断などで孤立したり動けないこともあります。多くの人や車があふれることで、救命救助活動に支障をきたすことも想定されます。そこで東京都では、混乱防止のため、社員を一定期間社内に待機させる「一斉帰宅抑制」を企業に推進しています。「東京都一斉帰宅抑制推進企業認定制度」に記載してある取り組みは、従業員の3日分の水、食料の備蓄従業員等との安否確認手段の周知発災時に安全な場所に留まること等の周知従業員及び施設等の安全確保などです。一定時間が経過した後の徒歩帰宅に備え、簡易食料や運動靴、帰宅経路の確認等の準備を行っておくことも大切です。お客様の安全確保のためにまた、百貨店やショッピングモールなどの商業施設やコンサートホールなどのエンタテイメント施設、テーマパーク、スーパーマーケットなどの場合は、お客様の安全確保も重要です。営業時間中の災害発生を想定したお客様の誘導訓練を定期的に実施し、もしもの時にも混乱することなく安全に誘導できるよう、従業員の意識付けは欠かせません。想定外の事態をできるだけ無くすため、防災シミュレーションゲーム「クロスロード」を使った研修なども有効です。もちろん、お客様を一時収容・避難受け入れをする場合に備え、施設内に食料・水の備蓄なども求められます。多くの人が出口に一斉に押し寄せたり押し合いになったりしてケガをするという事もあります。公共施設や不特定多数の人が集まる場所などではガラスでの事故が起きないよう、昭和61年に「ガラスを用いた開口部の安全設計指針」が示されました。これ以降に新たに計画された建物は、概ねこの指針にそって建設されていますが、古い建物だと安全なガラスを使うべき所に普通の板ガラスが使用されていることもあります。過去に、公民館の玄関ガラス扉に勢いよくぶつかったためにガラスが割れ、そのガラスで小学2年生の児童が亡くなる事故が起きました。この事故で遺族は公民館を管理している市に対して損害賠償請求訴訟を起こし、名古屋地裁は「開口部の安全設計指針」などによる安全に対する配慮を欠いたとして、損害賠償を認める判決を下しました。他にも、店舗の自動扉が安全ガラスでなかったために割れたガラスでケガをしたケースもあり、ビルオーナーや管理会社、店舗経営者などは自動扉のガラスなどは要チェックです。ガラス開口部の安全設計指針だけでなく、安全確保に関する配慮などの想定可能な事象に対する不作為は、罪に問われたり損害賠償を求められたりすることを認識し、見落としがないかチェックしておきましょう。トイレと換気の問題避難生活ですぐに問題となるのがトイレです。震災や洪水のような大規模災害時には、上下水道も止まってしまうことは想定しなければなりません。飲料水や食料などはしっかり準備しても、トイレの対策は忘れがちです。都市部のオフィスビルだと、1フロアに数百人が働いていることも珍しくありません。災害時のトイレ対応計画などをビルの管理会社に確認して準備しましょう。コロナ禍では3密を避けるようそれぞれの職場でも気をつけているでしょうが、災害で電気が止まると空調もストップし、換気もできなくなります。加えて夏の高温多湿の季節は、熱中症の危険度も高まります。コロナの感染防止策としてリモートワークを進め、オフィスへの出社を減らすことは、結果として災害時の企業リスクを軽減するのにも有効だということです。業務の効率化、働き方改革を進めることは、効率的なリスクデザインにも繋がります。