これまで、BCPについて散発的に何度かこのコラムで取り上げてきましたが、一度全体的に俯瞰しながら整理した方が良いのではと編集部で議論になりました。BCPはそれぞれの企業・組織・施設で業種や企業規模などに応じて想定すべき危機も変わってきますし、準備すべき内容も違います。そこで、これからBCP策定を検討している企業・組織のご担当者様向けにベーシックな基礎編として概略をお届けしたいと思います。進めていくうちに変わる可能性もありますが、現在予定しているのは以下のような構成です。BCPとは?BCPを策定する目的と期待すべき結果・効能誰が策定責任者・実務担当者に適しているか、なるべきかこれからBCP策定にとりかかる担当者がチェックしておくべきコンテンツBCPの策定にかかる費用と期間まず、第一回目の今回は「BCPとは」。BCPとCPを混同しないBCP策定に取り組もうとする際、あるいは策定を指示された時に思い浮かべるのは、自然災害で被災した後の復旧計画ではないでしょうか。BCPはBusiness Continuity Planの略で、事業継続計画はその和訳です。復旧計画ではなく継続計画であることがポイントです。BCPとよく混同されるのがCP(Contingency plan 緊急時対応計画)です。一般的な防災計画や事故対応はCPの一部です。緊急時の対応は個別事案のCPとして(あるいはBCPの一部として)策定します。商業施設で火災が発生した際の初期消火・避難誘導計画やインフラ企業の事故発生時の対応計画、あるいは大規模災害発生時に自治体が立ち上げる対策本部の対応などはCPです。つい先頃、こども達を殺傷する目的で刃物を持って保育園の様子をうかがっていた男性を不審に感じ、すぐに園内に危険を報せ、侵入した男を職員で取り押さえて被害を未然に防いだ例があります。これも事前に策定していたCPが功を奏した例です(園ではCPという認識かどうかはわかりませんが)。対してBCPは緊急事態が発生した際、平時と変わらず事業を継続できる、ダメージを受けたとして損害を最小限にとどめる、できるだけ早期に平常に戻すための準備計画です。 BCPは平常時の活動も対象にBCP(事業継続計画)とは、企業が自然災害、大火災、テロ攻撃などの緊急事態に遭遇した場合において、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法、手段などを取り決めておく計画のことです。-中小企業庁 BCP策定運用指針より上記中小企業庁の運用指針からの引用で注目していただきたいのは「緊急時における事業継続のための方法」の前に「平常時に行うべき活動や」とあるところです。緊急事態において何をするかだけでなく、平常時に何をするかもきちんと計画の中で決めて実行することが重要なのです。分かり易い例では、消防訓練や避難訓練、消火器や防災用品の使用期限・非常食や飲料水の消費期限のチェックなどを定期的に行うことや、入退館時のセキュリティチェックやPCのセキュリティソフト・OSのアップデートなど、ルーティン業務としてBCPの一部に組み入れることです。緊急事態は自然災害だけではない早急に作成を迫られる、高齢者施設・介護福祉施設等のBCPでも触れましたが、厚生省は高齢者施設・介護福祉施設等に、自然災害だけでなく新型コロナ感染症に対してもBCP作成を義務づけました(3年間の経過措置後、令和6年度から義務化)。このように、業種や業態によって備えるべき事象は様々に変わります。IT企業であれば、北海道胆振東部地震の際に発生した大規模停電のように、長時間の停電は緊急事態です。一般のオフィスでも、何も備えていなければ短時間の停電でも作業中のデータが消失することはありえます。旅行会社にとっては、海外のテロ事件や自然災害発生も緊急事態です。自社にとって、様々な事態を想定して平常時から備える。その「もしも」が発生した時に被害を最小限に抑え、できるだけ早く通常業務に近づけるための準備や工程をまとめたものがBCPなのです。