新型コロナのオミクロン株の広がりを受け、1月11日、東京都の小池都知事は「首都直下地震相当のものという認識だ」と危機感を示し、事業者に対し、BCPについての再点検を求めました。また、岸田首相も企業・自治体に対し「社会活動維持の観点から、テレワークの拡大など事業継続計画の準備を進めるようお願いする」と要請。BCP策定の必要性について言及しました。打ち合わせをしたわけでもないでしょうが、首相と都知事の2人が同じ日に(都知事はBCP、首相は事業継続計画と口にしたワードは違いましたが)BCPについて触れるのは異例と言えます。これを受け慌ててBCPの見直しや策定について検討を始めたり、部下に指示を出している経営TOPもいるのではないでしょうか。既にBCPを策定してる企業は見直し・再検討ですが、まだ手つかずの企業は大変です。そんな企業にはこれまで4回にわたってBCP策定に向けて基本情報をコラムとしてアップしてきましたので、順に目を通していただけると幸いです。中でも本格的に取り組もうという時に参考にしていただきたいのが、前回の「BCP策定担当者は要チェックのコンテンツ」です。ここで紹介しているガイドラインをじっくり読み込み、テンプレートを活用すれば自社内でオリジナルのBCP策定は可能です。しかし、ゼロからスタートすると、ガイドラインを読み込むだけでも相当な時間と労力を要します。初めてだと解らない言葉や周辺情報を検索したり調べたりするだけでも大変です。また、「誰がBCP策定責任者・実務担当者に適しているか、なるべきか」の稿でも指摘していますが、BCPの策定責任者は、現場の長や全体をまとめられる人でなければ実効性のあるプランにはなりません。業務に精通していない「新人」や「手が空いている人」に任せるべき仕事ではないのです。どの会社も今は人手不足でBCP策定にまで人を割くことができない状況では、外部の力に頼るしかありません。そこで気になるのは、専門家の力を借りるとどのくらいの費用がかかるかでしょう。 専門家もサポート内容も様々BCPを策定するにあたり外部の専門家の力を借りようとした場合、大別するとコンサルティング会社か行政書士事務所に、事業規模が小さかったりシンプルな場合は中小企業診断士やフリーのコンサルタントなどに依頼することもあります。コンサルティング会社は、BCP策定支援を専門にするところから、大手の総合コンサルティングファームまで数多くあります。行政書士事務所はBCP策定に伴い官公庁に提出する書類や契約書を作成する場合に依頼することが多いようです。近年BCPは国土交通省や厚生労働省など策定を求める省庁や自治体が多くなり、BCPを策定・提出して認定を受けたり入札の条件にするなどということが増えています。また、BCPの発動時に自治体や行政機関との連携や協力企業との協力などを要請する事が想定される場合には、行政機関や他の企業との協力契約文書を策定する必要があります。官公署提出書類や権利義務・事実証明に関する書類作成を伴う事も多いため、BCP策定支援を謳う行政書士事務所が増えています。 数十万円から1000万円超まで中小企業診断士やフリーのコンサルタントに依頼するのが適しているのは、事業規模が小さかったり事業内容がシンプルで、BCPで想定しなければならない事象も複雑なものがない場合です。このようなケースだと、30万円程度~/月で何ヶ月関わってもらうかが目安となるでしょう。 行政書士事務所に依頼するケースは、BCP策定の目的が決まっていて(何かの認定や提出のため)、ある程度整理が付いている場合です。行政書士事務所もBCP策定は主たる業務ではなく、役所に提出できる型どおりのものを策定し、そこから派生する書類作成の受託を期待しています。そのため、BCP策定費用は比較的リーズナブルに収まります(数十万円程度)が、できあがりは汎用的なBCPにならざるをえません。コンサルティング会社の場合は、テンプレートを業種別に複数用意してありそれを埋めて行くことでBCPができあがるようなところから、複数の調査員が現場のヒアリング・調査をし、それをもとに分析し策定にかかるところまで手法も規模も様々です。スピード重視ならテンプレートを用意しているコンサルティング会社に依頼するのが簡単で、最短1カ月程度からで料金も事前に見積もり確認できる(100万円~200万円程度)ので安心かもしれません。ですが、依頼する会社の個別事情や特殊性などはネグレクトされ、最大公約数のBCPとなることは否めません。BCP策定を機に自社事業を見直そうと社内プロジェクトを立ち上げ、コンサルタントにファシリテート・策定サポートを依頼する様なこともあります。この場合は3万円~/時間や10万円~/日などの従量課金で契約することもあります。調査や項目出し、整理からまとめ作業などプランの策定自体は社内で行わなければなりませんので、プロジェクトリーダーの力量で期間とコストが大きく変動します。最も高額になるのは、大手コンサルティングファームにBCP策定を丸投げする場合です。複数の事業や工場などを持っていれば、それぞれに調査員やコンサルタントを張り付かせてリスクを洗い出し、全てのリスクに対しての優先順位付けから対応策までを社内ヒアリングや調査を元に整理していきます。派遣するコンサルタントの数や拠点数などで大きく変動しますが、1000万円どころか数千万円になることさえあります。 施設設備の対応にも費用がBCPを策定する課程でリスクを減らしたりインシデントに対応可能とするために、施設や設備の増設や入れ替えが必要な場合もあります。自家発電装置や蓄電池、無停電装置やバックアップサーバの増設など、BCP策定費用よりもはるかに高額となることも珍しくありません。東南海地震や首都直下型地震、河川の氾濫などに備えようと建物自体を立て替えたり移転したりすると、さらに大きな負担となります。BCP融資制度なども活用しながら、リスクに備えるようにしましょう。外部に依頼する際にはBCPについて最低限の知識を持った上で、策定目的を明確にし進め方についても確認したうえで契約しましょう。そうでないと、必要以上に時間を要したりコストがかさむだけでなく、社内的にも苦しい立場になり苦い思いをすることになりかねません。