危機管理広報は、これから起こること、問われることなどあらゆる事に想像を巡らし、リスクを予見しなければなりません。記者会見やマスコミへの発表は予見されるリスクを集約し、優先順位を付けた結果としての計算された対応の場でなければなりません。危機管理広報を任される人、その可能性がある人が意識しておくべきことは、1. 時間との勝負危機管理広報は時間との勝負です。初動で後れを取ったり誤った対応をとったりすると、メディアの批判やネットで炎上などにも繋がりかねません。情報をコントロールするために事実確認に始まりポジションペーパーの作成、広報の方針を決め必要に応じてプレスリリースや記者会見の段取りを進めなければなりません。高い情報処理・整理能力が求められます。記者や社内外からの問い合わせに対して窓口を一本化し、Q&Aも準備しておく必要があります。場合によってはこれらを数時間でやってのけなければなりません。分担して作業を抱え込まず、限られた時間でまとめるプロジェクトリーダー的な資質も求められます。2. 過去の事例(成功事例・失敗事例)を学ぶ大企業でない限りCROはもちろん、危機対応の経験を積んだベテラン広報マンが社内にいることはまずないでしょう。そもそも、普通の企業ではそんなに危機に直面することはないですし、危機対応の経験などないに超したことはありません。しかし、経験は無くとも様々な危機を想定しておく事は重要です。経験が浅く、これから危機管理広報に携わろうというのであれば、過去の事例を多く知ることです。本や勉強会などもありますが、ネットで検索すれば過去の様々な危機対応事例を見つけることができます。事件や事故を伝える記事やwikipediaの解説、YouTubeには会見の動画も多数有ります。1つの事件・事故を複数の記事や解説から読み込み、この場合自分だったらどうするか、どうすれば良かったかなどシミュレーションを繰り返します。こうして多くの事例でシミュレーションを繰り返すことで仮想の経験値を上げておくのです。多くの成功・失敗事例を頭に入れておくことは、いざというときに判断する指針になってくれます。 3. 外部の力を借りることを厭わない2の冒頭でも書いた通り、ほとんどの会社では危機に対応できる経験を積んだ人は社内にはいません。時間との闘いのさなか、的確な判断と対応が求められますが経験も無ければそのスキルもないかもしれません。これまでの危機対応失敗事例の多くは、全てを社内だけで判断して対応したケースです。こういう時には弁護士やコンサルタント、PR会社などにすぐに相談する事が重要です。自社にとって都合が悪いことであっても、守秘義務がありますのでそこから漏れることはありません。そのためには、危機対応経験があるPR会社や弁護士、コンサルタントなどをリスト化しておくことをオススメします。外部の力を借りる判断を下せる人がTOPであることは重要です。 失敗する対応をしがちな人は上記2でも触れましたが、たくさんの危機対応広報事例をネットで見ることができます。これはいただけないなという事例を見ると、共通する対応・失敗が見つかります。いくつか例を挙げると、1. 嘘を言う、事実を隠す、他者のせいにする、責任回避する多くは、TOPあるいはその部門長が事実から目を反らし、責任追求を逃れようとすることから始まっています。事実を正面から受け止められない人、保身に走る人、古い常識や考えをアップデートできない人は危機対応の場からは外すべきです。 2. メディア慣れしている普段からテレビや雑誌の取材やインタビューを受け、メディアへの露出が多い経営者やメディアとのやりとりが多い広報担当者は、危機に際しても通常と同じような対応をして失敗することがあります。自分はマスコミ対応には慣れているという過信から思わぬ落とし穴にはまることになります。元全国紙記者など大手メディア出身の広報担当者も、それまでは取材する側・追求する側にいたので、立場が逆転してのイライラやストレスから暴言や失言で失敗した例もあります。 3. 第三者の声を聞かない外に漏れたら大変だとばかりに限られた人間だけで極秘対応しようとすると限界があります。冒頭に書いたように、あらゆる事を想像しながら対応していかなければならないのに同じような価値観・想像力の人間だけが集まっても想定できる範囲はしれています。客観的で多様な視点でリスクを洗い出す必要があります。厳しいことや突かれたくないことまで指摘する人間が必要です。しかし、往々にしてそのような人を排除しようとします。 危機に際しては、できるだけ早い段階から専門家にサポート依頼をすることが安心に繋がりますし、より的確な対応が可能になります。目先のサポートコストを出し惜しみし、取り返しのつかない危機対応の結果、その後に莫大な損失を被ることだけは避けたいところです。