7月2日の早朝に発生したau(KDDI)の携帯電話サービスの通信障害は、au携帯電話、UQ mobile携帯電話、UQ WiMAXデータ通信、povo、au回線利用事業者の音声通信、ホームプラス電話、ホーム電話、auフェムトセル、SMS送受信など、3900万以上の回線に影響を及ぼし、電話やデータ通信だけでなく気象庁の観測データやインフラの計測データ収集、銀行ATMにまで広く影響を及ぼしました。機器の復旧作業後もまだ障害は続き、通信の完全復旧まで80時間以上を要する大規模障害でした。過去にもソフトバンク、NTTdocomoでも通信障害事案は発生していますが、これほど大規模で長期間にわたる事はありませんでした。しかし、今後同じような通信障害が起こらないとは言い切れません。これだけあらゆるものが通信インフラの上で稼働している今、長時間ではなくても途切れる事があると大きな影響を受けてしまいます。障害発生の原因やその後の対応、KDDIの会見についての賛否なども様々なメディアで言及されているので、ここではこのような通信障害リスクにどう備えるかを考えてみたいと思います。ネットで繋がる前の最大のリスクは停電だったネットで繋がる以前のデータ処理は、スタンドアローンの大型コンピュータ(メインフレーム)によるものでした。あるいはせいぜい構内LANで接続された閉じたネットワークでのオフコンやミニコン(ワークステーション)での処理で完結していました。その当時の一番の心配は停電によるシステムダウンやデータ喪失です。そのため、無停電装置の導入やシステムの2重化などでそのリスクに備えていました。その後、パーソナルコンピュータやwindows95の登場により、コンピュータが中小企業や個人にも身近な物となります。使いやすいブラウザの登場もあり1990年代後半にインターネットへの接続が容易になると、インターネットを介してのデータのやりとりも活発になります。回線スピードも9600bpsから1Gbps(あるいはもっと高速)へと約10万倍になり、高速大容量回線が主流となりました。データ処理や保管もクラウドで行うようになり、物理的にサーバが何処にあるということを意識しなくなりました。ネットへの接続方法もケーブルから無線へ、更には移動体通信回線により場所を選ばず可能となりました。今では、時と場所を意識する事無くあらゆる物がネットで繋がっています。繋がっていることが当たり前だからこそのリスクこの、繋がることが当たり前で、通信で繋がっていることを意識しない日常で起こった今回のau(KDDI)の通信障害は、一部の人にパニックを引き起こしました。特に、電話を中心に使っている高齢者やデータ通信量の上限を20GBや50GB、100GBなどで契約し、データ通信の使用量を気にすることなくスマホを利用していた人たちです。普段Wifiへの接続を気にすることも無かったので、Wifiが繋がる環境にあってもうろたえてしまってそのことに気がつかなかったり、繋ぐ方法がわからなかったりしています。Wifiにさえ繋がれば、メールの送受信も可能ですし、LINEやMessenger、Skypeなどを使って音声通話も可能です。仕事上の連絡にLINE WORKSやサイボウズなどのグループウェアを導入している企業であれば、Wifiに繋がればスマホからアクセス・連絡が可能です。ニュースでは電話が繋がらなくて困っている人の声ばかりを拾っていました(しかも駅前などで)が、東京メトロなど大都市の地下鉄駅や空港などの公共施設の多く、コンビニ(セブンイレブンは22年3月で終了)やファストフード店などにはFreeのWifiが設置されています。そのような場所に移動するだけでWifiに繋ぐことができるのです。通信は暗号化されていない所がほとんどなので利用には注意を要しますが、最低限の連絡は可能です。通信障害や不意の連絡途絶で業務に影響を及ぼさないためにコロナ禍以降に進んだテレワークやリモートワークは、ネットで繋がることが前提です。プライベートの利用と分けるため、回線契約をしたデータ通信機能内蔵のノートPCを貸し出している企業も多いのではないでしょうか。今回の通信障害の報道でほとんど触れられませんでしたが、このようなデータ通信で繋ぐノートPCの回線契約先がauだったら当然影響を受けています。しかし、仕事をしている場所が自宅やホテルなど、暗号化されたWifi環境が整っている場所であればそのままWifiに繋ぎ直して仕事を続けることはできます。ただし、暗号化されていないセキュリティに不安がある場所では接続は避けるべきです。逆に、自宅やリモートオフィスで契約している回線に影響が出て接続できなくなることもあります。出張や外回りが多い人はポケットWifiやモバイルルーターを契約している人も多いと思いますが、このような場合のバックアップ回線としても有効です。また、スマートフォンのテザリング機能でPCなど他の機器をネットに繋ぐ事ができます。ATMや自動販売機、自動車などネットに常時繋がっていて機能する機器についてはすぐに代替の手段を講じることは難しいですが、少なくとも日常利用するPCや通信機器については、いざというときに連絡・接続できるようなバックアップ措置や通信手段の確保方法を、従業員に周知・シミュレーションをしておくことは必要でしょう。特に、Free Wifiに接続するときの注意と接続方法についてはよく確認しておく必要があります。都市部ではどこにでもあるコンビニですが、ローソンはWifi設定画面でSSID:LAWSONFreeWi-Fiを選択してブラウザから、ファミリーマートはFamima_Wi-Fiを選択してブラウザかアプリで接続できます。なお、ファミリーマートは7月31日にサービスを終了しますが、ドコモユーザーでなくても利用できるd Wi-Fiが引き続き利用できます。d Wi-Fiは、ファミリーマート以外でも利用できるスポットが多いので、アカウントを取得しておくと安心でしょう。また、空港ラウンジなどのFree Wifiにブラウザから接続する際に、広告ブロックの設定をしていると、接続ボタンが表示されない仕様のところがあります。そのようなときには広告ブロックを一時的にオフにすると接続することができます。PC、スマホに複数のブラウザをインストールし、広告ブロックのプラグインを入れていないブラウザも使えるようにしておき使い分けると良いでしょう。人里離れた場所でワーケーションするときには、モバイルバッテリーだけでなく、いきなりの停電や長時間の孤立も想定して、ポータブルバッテリーやソーラー発電パネルなどのバックアップ電源の準備も忘れずに。