令和元年(2019年)東日本台風、令和2年(2020年)7月豪雨の土砂災害、浸水害、洪水災害、そして令和3年(2021年)7月 の集中豪雨で、静岡県や神奈川県を中心に大雨が降り、神奈川県の箱根市で72時間雨量が800ミリを超え、静岡県熱海市では土石流災害が発生しました。令和3年(2021年)8月 の集中豪雨で、佐賀県の嬉野市で72時間雨量が900ミリ超え、長崎県の雲仙市、長崎市、佐賀県の鳥栖市で72時間雨量が800ミリを超え、27水系67河川で氾濫しました。近年、このような大雨の災害が頻発しています。気象庁では、災害リスクと地域の特性により災害発生の危険度を予測 した分布図によって、災害発生に対する警戒を出す「キキクル(大雨・洪水警報の危険度分布)」を発表するようになりました。 過去の災害から新しい気象情報に向けて国土交通省 気象分科会で、平成26年8月20日に広島市で土砂災害が発生した際に発表した一連の防災気象情報について、以下のような課題が取り上げられました。それは、夜間の避難を回避するため、確度が高くなくとも警報級の現象になる可能性がある場合などは、早い段階から一段高い呼びかけの実施ができないか。実況情報をより迅速に発表していくことができないか。避難勧告等の対象範囲の判断を支援するため、範囲のわかる地理メッシュ情報の促進が必要ではないか。今後予想される雨量等の推移や危険度を、より分かりやすく、より確実に提供できないか。これらの課題に対して、防災気象情報の改善に向け「社会に大きな影響を与える現象について、可能性が高くなくとも発生のおそれを積極的に伝えていく」や「 危険度やその切迫度を認識しやすくなるよう、分かりやすく情報を提供していく」ことを目指して、以下の項目に対応することとしました。極めて大きな被害をもたらす集中豪雨などは社会的な影響が大きいことから、集中豪雨が発生する可能性が高くない場合も含めて、夜間から早朝における発生のおそれを「高」や「中」といった確度で、夕方の時点で発表すること住民の命を守る行動をいち早く促すため、記録的短時間大雨情報の発表を迅速化すること災害の危険度分布を地図上で道路、河川、鉄道などの情報を重ねて分かりやすくすること警報などの防災気象情報は主に文章で発表されていますが、これに加えて、注意報級や警報級の雨になる時間帯を視覚的に分かりやすい形で提供すること「警報級の現象になる可能性」について、数日先の雨などについても提供していくこと現在の防災気象情報現在は、気象庁の発表する防災気象情報のひとつとして、警報危険度分布があります。これは大雨による土砂災害・浸水災害・洪水災害の危険度の高まりを面的に地図上で確認できるシステムです。災害の危険度を5段階で色分けして地図上にリアルタイムに表示するもので、2021年3月に「危機が来る」に由来した「キキクル」という愛称で気象庁のホームページに発表されます。気象庁ホームページのほかにも、テレビの気象情報、スマホアプリなどから届く「危険度通知」にも使用されています。降雨は、地中に浸み込んだり地表面を流れるなどして川に集まります。大雨では、雨が地中に浸み込んで土砂崩れを発生させたり、地表面に溜まって浸水災害を起したり、川に集まった雨により川が増水することで洪水災害を起こすことになります。警報危険度分布(キキクル)は、このような雨水の挙動を指数化することにより、災害リスクの高まりを「降雨量」そのものよりも災害発生危険を適切に評価・判断することにより、より的確な警報発表につながるようにしています。その概要図について下記のように気象庁で発表しています。気象庁HPキキクル(警報の危険度分布)よりキキクル(大雨・洪水警報の危険度分布)と避難行動キキクル(危険度分布)は、警報が発表されたときや、強い雨が降ってきたときに、どこで土砂災害や浸水災害、洪水災害の危険度が高まっているかを知ることができる情報で、すなわち危険が迫った地域住民の命を守るための情報になります。避難ガイドライン(内閣府)では、地域住民は、「自らの命は自ら守る」との意識を持って、自らの判断で避難行動をとってもらうとの方針が示されています。住民は自治体や気象庁などから発表される防災情報でとるべき行動を判断することになります。この住民のとるべき判断を直感的に理解しやすくするため下図(防災気象情報と警戒レベルとの対応について)のように5段階の警戒レベルを明記して防災情報が提供されることになっています。「キキクル」により地図上に5段階の警戒レベルが表示されます。自治体はこの情報などを基準に、警戒レベルを発令します。自治体から「警戒レベル4避難指示」や「警戒レベル3高齢者等避難」が発令された際には速やかに避難行動をとる必要があります。ただ、多くの場合、防災気象情報は自治体が発令する避難指示等よりも先に発表されるといわれています。このため、危険な場所からの避難が必要とされる警戒レベル4や高齢者等の避難が必要とされる警戒レベル3に相当する防災気象情報が発表された際は、自治体からの避難指示等が発令されていなくてもキキクル(危険度分布)や河川の水位情報等を用いて自ら避難の判断をする必要があります。