企業経営はリスクとの闘いと言われます。企業を取巻く様々なリスクをどのようにマネジメントして、利益を最大化するかということが企業経営の根本的な経営戦略になります。その経営戦略の重要な要素として、リスクマネジメントがあります。これを実行するためには、まず第一に企業はどのようなリスクに晒されているのかを知る必要があります。企業経営リスクとはなにか?「リスク」という言葉を聞いたことのない人は少ないと思われます。しかし、「リスク」について、正しく理解している人は少ないかもしれません。世の中にはさまざまなリスクが存在し、それを適切にマネジメントしなければ企業にとって大きな損失につながることになります。リスクという言葉を聞いた時に、どのようなイメージを思い浮かべるでしょうか。おそらく「あぶない」「危険」といったイメージを考えるのではないかと思います。そこで企業にとってのリスクは何なのかについて考えます。リスクの定義は、分野によっていろいろとありますが、最近の企業におけるリスクの定義は、「企業の収益や損失に影響を与える不確実性」と定義されることが多くなりました。これは、リスクとは「予測できない」、「確実でない」という事であり、企業収益への影響が、減益だけでなく増益もリスクと考えると定義されています。これは、「収益を得るためにはリスクを取らなければならない」と言われることも含んでいます。しかし、リスクの影響で損失を与えるという意味で使われることが一般的かもしれません。それは、「企業にとって不利な影響を与える事象」ということになります。このように、収益などに対してプラスもマイナスも含むリスクを「投機的リスク」、マイナスのみを含むリスクを「純粋リスク」という事もあります。ここでは、概念的に理解しやすく、対応策についても対策が取りやすいマイナスのみを考える「純粋リスク」をメインに考えていきます。企業を取り巻くリスクとは?企業を守るためには十分にリスクを想定しておく必要があります。リスクマネジメントにおいても、最初に自社がどのようなリスクに晒されているのかを把握しなければなりません。しかし、実際には「具体的にリスクが何を指すのか分からない」「リスクの種類が多すぎる」などという意見が多く、リスクの洗い出しや特定が行えないといったことが多くあります。これは、リスクという言葉が抽象的であること、またリスクの種類が多岐にわたるためではないかと思われます。リスクの種類を考える企業におけるリスクを考える場合、リスクの種類を理解すれば、どのようなリスクが発生するのかを想定しやすくなります。企業を取り巻く主なリスクの種類は、一般的に (1)政治・経済・社会リスク、(2)経営に関するリスク、(3)災害・事故などのリスクなどに分類されます。以下に分類されたそれらのリスクの一部について説明をします。政治・経済・社会リスク会社経営の自社の努力では抗えない、社会全体の変化による企業へのリスクなどになります。例えば、「経済状況の悪化」「風評被害」「法改正」「市場ニーズの変動」などがあります。経営リスク企業が経営を行ううえで生じる可能性のあるリスクになります。例えば、「経営判断ミスによる業績の悪化」「展開した事業の難航」「人材の流出」「商品のリコール」「競合企業の参入」などがあります。災害リスク自然災害や事故などによって引き起こされるリスクになります。災害といっても自然災害、人為災害、特殊災害など多種多様な災害があるため、対策を行うためには多くの災害を考慮する必要があります。例えば、「地震や台風・洪水などの自然災害」「火災や労働災害などの人為災害」「感染症の蔓延」「設備や機器の操作ミス」「交通事故」などがあります。労務リスク労働問題によって発生するリスクです。労働問題による裁判や損害賠償金の支払い等があります。企業のイメージダウンなど深刻な事態になることもあります。例えば、「セクハラやパワハラなどのハラスメント」「社員による情報漏洩」「長時間労働」や「残業代の未払い」などがあります。コンプライアンスリスク法令や契約の違反によって企業が受けるリスクです。セクハラやパワハラ等の労務リスクと重なる場合があります。例えば、「知的財産権の侵害」「景品表示法違反」「虚偽申告」「製造物責任」「優越的地位の乱用」などがあります。財務リスク企業の運転資金の調達や投資による損失などで発生するリスクです。例えば、「業績や資金繰りの悪化」「金利や為替の変動」「取引先の倒産による資金の回収不能」などがあります。このように、リスクの種類は多岐にわたります。しかし、発生しやすいリスクやリスク発生時の企業への影響度といった視点では、業種、立地、経営状況によって大きく異なるため、企業ごとにリスクについて考える必要があります。自社のリスクを考えるリスクを考えることは、自社の事業の目的達成に影響を与えかねない全ての事象をリスクだと考え、抽出する必要があります。自社のリスク抽出を行う際に担当者一人に任せるといったことは避けるべきです。部門や業務、立場、経験あるいは性格によって考える「リスク」が異なることがよくあります。人によってリスクとして捉える事象は異なることがあるため、抽出されるリスクに偏りが出てしまったり、漏れてしまうおそれがあるためです。そのため、経営層全体とか、各部署から集めた複数人でのリスクの抽出を行なっていくのが良いと考えられます。複数人で想定されるリスクを抽出していくことで、1人では把握しきれなかったリスクを他部門の意見によって認知ができたり、各人の間でもどのような事象をリスクだと捉えるべきなのかが分かることが重要です。リスク洗出しの具体的な手法のひとつとして、経営層、各事業部の責任者へのアンケート調査・ヒアリングやブレインストーミング等による会社全体を見渡したリスクの抽出を実施します。また、各部門別にアンケート調査、ヒアリングやブレインストーミングを行い、考えられるリスクの抽出を実施します。このようにして全社で想定されるあらゆるリスクを洗い出すことを行います。ここで重要なのは、主観的な判断で些細なリスクだと判断したりすることなく、すべてのリスクを漏れなく抽出できることが必要になります。このように、リスクの抽出にとって重要なのが、可能な限り網羅性を高めることが重要です。その後に、「経営への影響」と「発生頻度」を2軸にマッピングした「リスクマップ」の分析により、その企業に固有な特徴的リスクの特定等を実施することになります。関連用語リスクマネジメント