4月、二人の著名人がネットで物議を醸しました。一人は政治家の小泉進次郎氏、もう一人はサイボウズ代表の青野慶久氏。小泉氏は4月8日、統一地方選挙の応援に行く移動中の電車内で自撮りした写真をInstagramに投稿しています。自撮り写真の背景には、同じ車両に乗っている一般の人が写り込んでおり、プライバシー保護や写り込んだ乗客への配慮について批判コメントが付いています。一方の青野氏は4月16日、Twitterでテロに関しての持論を投稿しました。この投稿は1週間で560万回表示され、2,806件のリツイート(うち引用リツイートは2,259件)、「いいね」は6,999 件と賛否入り乱れています。中には、サイボウズ社の経営方針に疑問を呈する書き込みや株に関する書き込みもあります(株価には影響していないようです)。政治家は失言を繰り返すモノ?これまでも政治家の失言が問題になり、このコラムでも取り上げたことがあります。政治家の失言はテレビで報道されることも多く、時には国会の審議にまで影響します。特に大臣の失言は辞職や更迭だけでなく、場合によっては総理大臣の任命責任まで問われます。岸田政権で「法務大臣は、死刑のハンコを押した時にだけニュースになる地味な役職」と発言して法務大臣を更迭されたのは葉梨康弘衆院議員でした。過去にも、東日本大震災に関連する失言で、今村雅弘復興相(当時)が「まだ東北で良かった」と発言し、桜田義孝五輪相(当時)は同僚議員のパーティで「復興以上に(議員が)大事」と発言、共に大臣を辞任しています。記者やメディアは失言を切り取ろうと四六時中狙っています。特に、同僚議員の政治資金パーティや後援会の集まり。身内や身近な人が多く、リップサービスのつもりで発した言葉が失言となっています。インターネットも影響力のあるメディアと位置づけこれまでの失言はリアルな「場」での失敗をメディアが追求していましたが、冒頭であげた小泉氏や青野氏のように、インターネット空間での自らの投稿が問題になるケースが増えています。選挙に勝つには長い間ジバン(地盤=支持組織)、カンバン(看板=知名度)、カバン(鞄=資金)の「三バン」が必要だと言われてきました。しかしそれも変わりつつあります。選挙運動もインターネットを使うことが可能になりました。先の参議院議員選挙では、一度も選挙民の前に姿を現すことなくインターネット上でのみ選挙活動を展開したガーシーこと東谷義和氏が当選(後に除名)したように、情報発信・収集手段も多様化し、有権者との接点・コミュニケーション方法も必ずしもリアルな場である必要はなくなりました。メディアの影響力も変化しています。インターネット媒体広告費(2兆4,801億円)がマスコミ4媒体の総媒体広告費(2兆3,985億円)を抜いた(2022年電通調べ)ことからも明らかなように、インターネットは通信手段からメディア(広告出稿先)としての役割が色濃くなっています。しかも、双方向、リアルタイムでのコミュニケーションが可能なのでメディアとしてのサイト開設が盛んになると共に利用者も増え続けています。中でもデジタルネイティブ世代には、SNSは情報収集・発信ツールとして必須のモノとなっています。秘書や広報に火の粉が降りかかる前にそもそも、パーティでの応援スピーチや後援会での挨拶は事前に準備ができます。話はどんな内容にするか、掴みは何から入るか、締めはどうするか。少なくとも、事前に言ってはいけないワードの確認くらいはしておく必要があります。自分で準備できなければ政策秘書にまとめてもらって確認しても良いでしょう。経営者もメディアの取材や講演会で失言するケースがありますが、同様に準備が可能です。多くの企業では取材窓口は広報ですから、取材の趣旨や要望を聞き取り(取材趣意書の提出を求めることもあります)、経営者に事前にレクチャー・確認します。取材時にもそばについて数字の確認やサポート、取材終了後の確認・メディアフォローをしなければなりません。結局は秘書や広報がその後の対応に追われることになるのですから、自分事として失言や対応ミスを未然に防ぐ準備と行動をしなければなりません。個人アカウントのSNSであっても政治家や企業経営者も、TwitterやInstagramなどSNSのアカウントを取得して投稿している人は多くなりました。しかし、ベテラン・重鎮の政治家や経営者は秘書やスタッフに写真を撮らせ、投稿も彼らにやらせているケースも多いようです。アカウントは自分のモノだけれど、実際の運用はスタッフです。スタッフにとっては業務ですから、問題が起こる様な投稿はほとんどないでしょう。対して青野氏も小泉氏も、経営者・政治家としては若手、ネットもSNSも使い慣れています。個人アカウントは自分の思いのままに投稿しているでしょう。青野氏のTwitterフォロワーは6.4万人、小泉氏のInstagramのフォロワーは8.9万人です。これだけのフォロワーがいると、その影響力はちょっとしたローカルメディアや紙媒体に匹敵します。誤った使い方や投稿は政治家や経営者としての資質に疑問を持たれたり、所属政党・企業の活動にも影響を及ぼしかねません。それだけに投稿内容については注意が必要です。ネット社会は不寛容ChatGTPで青野氏の投稿についてリスクを尋ねてみました。すると、以下のような回答が得られました。Q:サイボウズの青野代表のツィートが炎上するリスクはありますか?A:このツイートは、一部の人々から炎上する可能性があります。特に、自民党支持者や旧統一教会支持者から批判される可能性があります。また、テロの被害者やその家族からも批判される可能性があるため、慎重に発言する必要があります。しかし、このツイートは社会的な問題についての議論を呼び起こす重要なトピックを提起しているため、議論が進展する可能性もあります。それでも、サイボウズの青野代表が経営する企業のイメージに影響を与える可能性があるため、ツイートを投稿する前に慎重に検討する必要があります。 ChatGTPでもリスク有りと予測しています。不寛容なネット社会の炎上事例はたくさん学習しているでしょう。これから、SNSの投稿リスクを自動判断するAIなども出てくるかもしれません。しかし、その前にアンガーマネジメント同様、まずは投稿前に一呼吸置いて確認することを心がけましょう。