元陸上十種競技選手でタレントの武井壮氏の、11月8日のX(旧Twitter)への投稿がネットで注目されました。1分間最強を決める格闘技イベントBREAKING DOWN(ブレイキングダウン)への参加拒絶を表明したものです。 BREAKING DOWN(ブレイキングダウン)とは私は格闘技ファンではないので、今回話題になるまでブレイキングダウンのことは知りませんでしたが、金網などで囲われたリングでグローブを着けて闘う格闘技。YouTubeでオーディションや試合の総集編などが見られます。グローブを着けているけれど、蹴りも寝技もOK。しかし、レスリングやボクシングとは違い、制限時間はわずか1分間。1分間に全力を出し切って強さを競い合い勝負を決めるという、競技ルールはあるものの喧嘩のような格闘技です。タトゥーや刺青を入れた出場者も少なくありません。出場選手を選定するオーディションは、喧嘩自慢がお互いに強さをアピールし路上の喧嘩そのもの。試合のリング中央にも「喧嘩道」と描かれています。オーディションでも記者会見でも威嚇し合い、つかみ合ったり殴りかかったりとずっと闘争心むき出しです。係員が止めるのでその場で格闘にはなりませんが、本戦へのプロローグとして期待を盛り上げます。試合は会場でのリアル観戦と、オンラインでのライブ観戦(有料)となります。Xでの投稿全文とネットでの反応そんな強さを競うブレイキングダウンに、“百獣の王“の異名を持つ武井氏に対し出場しないのか?という声があったのでしょう。そういう声に対する回答として、Xへ「出る訳ねえだろ!」と断固拒否する投稿をしました。 X投稿全文(原文ママ)『ブレイキングダウンに出て口だけじゃなく本当に強いのか証明しろ』とか言われるんだけど、出る訳ねえだろ!刺青入った人と写真撮っただけで世間から『付き合いがあるのか?』と叩かれて仕事無くなったりする仕事してんだぞ?刺青入って『殺すぞ!』とか凄んで試合でもねえとこで暴行してるやつらがいる現場に行ける訳ねえだろ!タレントはつまらん、テレビはつまらん、とか言ってるけど、そんなんじゃねえんだよ。。コンプライアンスでテレビは外れたこと何もできないとこに、YouTubeが現れて、危ないことや、モラルに反する事でもなんでも動画にすりゃ再生増える。そら素人でも有名になるし、企画が面白い!テレビより楽しい!とかよそんなもん我々からしたらドーピングだよやっちゃいけないもんで再生数稼ぐこともできんだからタレントが同じことやってみろよ、3日でニュースが出て叩かれて終わりだよそれを不良やチンピラが人に向かって『殺すぞ!』と殴りかかる動画に出ろ!ってよ。。出られる訳ねえだろ!何者かもわからん不良連中と殴り合いして金もらったらお終いだよこっちゃ、そんなのと写真撮るだけでも叩かれんだろ俺たちは?それを『かっこいい!』『面白い!』『素晴らしい企画!』ってさ。。オレ達が番組や企画で人殴ったら逮捕だよ!それこそ犯罪者になって終わりなんだよ!どんなダブルスタンダードなんだよいったい。。この投稿から1週間後の11月15日時点で、2,116万回表示され、”いいね”が6.1万、リポストが9,782、コメントが1,628もついています。コメントの多くは肯定的なもので、中にはリスク管理やコンプライアンスの面からのコメント(投稿を肯定)も見受けられます。望まない人との写真が大きな問題に投稿中に「刺青入った人と写真撮っただけで世間から『付き合いがあるのか?』と叩かれて仕事無くなったりする仕事してんだぞ?」「何者かもわからん不良連中と殴り合いして金もらったらお終いだよこっちゃ、そんなのと写真撮るだけでも叩かれんだろ俺たちは?」という一文がありますが、これで思い出されるのがつい先日の加護亜依さんが指定暴力団の現役幹部組員と一緒だったとされる韓国旅行の写真と動画です。その投稿さえしなければ…加護亜依、松川るいにみるSNS炎上事例加護さんは否定をするものの、その後も白黒がはっきりしないままです。11月15日放送の音楽特番「テレ東60祭!ミュージックフェスティバル2023 ~一生聞きたい!昭和・平成・令和ヒット曲100連発~」で復活が注目された「ミニモニ。」。しかし、本来ならそこにいるはずの加護さんの姿はありませんでした。この件について、芸能ライターなどは反社との交友報道が尾を引いているとしています。まさに「刺青入った人と写真撮っただけで世間から『付き合いがあるのか?』と叩かれて仕事無くなったりする仕事」であることの実例と言えます。武井氏の脳裏にはこの加護さんの件もあったのかもしれません。ビジネスの世界でも、コロナ禍が明けて会食や会合に出席する機会も増えています。そこでたまたま同じテーブルに座ったり一緒に写真を撮ってSNSにアップしたら、実は反社や問題のある人である可能性もあります。その写真が後々、取引や資金調達に影響を及ぼす可能性もあります。初対面の人との写真をSNSにアップするのは慎重にしなければなりません。同様に、若いビジネスマンなどを対象にしたセミナーが、実は宗教団体やネットワーク・マルチ商法の会社主催の勧誘を目的にするものだったりということもあります。こういう会に参加したときも、リアルタイムでSNSでアップすると後で取り返しの付かないことになりかねませんので要注意です。同じ過ちは2度繰り返さない武井氏といえば、日本フェンシング協会会長を務めていたときに、やはりX(当時はTwitter)への投稿が批判され、当コラムでも取り上げました。 バレーボールとフェンシング2つの謝罪会見から経営者が学ぶことこのときには、ステークホルダーの存在を意識していなかったのかもしれません。個人的な感情の吐露がフェンシング協会にも自分自身にも跳ね返ってくるとは思ってもいなかったのでしょう。この時の苦い思いが今回のブレイキングダウン参加拒否の投稿(内容)になったのでしょうか。不用意な匂わせや出場を表明するような投稿をしたらどういうことになるか、どれだけの人に迷惑を掛ける事になるかを冷静に想像することができたのでしょう。タレントさんや有名人は自身の肖像権の保護も意識しなければなりません。ときにゆがんだ正義を振りかざしたり自分の価値観を声高に押しつけるような人も現れる不寛容な時代とも言われます。武井氏の投稿に対して多くの肯定的なコメントや“いいね”が付いたのも、世の中がコンプライアンスや社会正義(反社会的行為)に敏感に反応するようになったことの現れでしょう。ビジネスでも取引先、ビジネスパートナー、顧客としてつきあうべきか距離を置くべきか、冷静な見極めとトラブルに巻き込まれないためのリスク管理が重要になります。