2023年11月28日、日本テレビ系列の日本海テレビ(鳥取県)は、経営戦略局の局長が10年にわたり合計1,118万円余りを着服していたとして会見を開きました。局長を懲戒解雇処分、不正を見落としてきた責任を取り、会長は辞任、社長は3ヵ月分の給与を返上すると明らかにしました。職員の横領や着服はあってはならないことですが、額の大小の差はあるにしても企業の不祥事としては珍しいことではありません。大手金融機関などを除けば会見を開いたり会長が辞任するということはほとんど聞いたことがありません。日本海テレビが何故ここまでの対応をすることになったかと言えば、着服したお金の中に毎年恒例のチャリティ番組『24時間テレビ』の寄付金264万円余りも含まれていたためです。日本テレビの報道姿勢に疑問の声日本海テレビでの募金着服について、日本テレビは「寄付金の着服は断じて許されることではなく、今回の事案は誠に遺憾です。番組を制作・放送している当社としても、寄付をしてくださった皆様、番組やチャリティ事業に関わってくださった皆様、スポンサー各社の皆様、ならびに視聴者の皆様に対し、心よりおわび申し上げます」とのコメントを発表しました。日本海テレビと前後して、同じく日本テレビ系列局の読売テレビでも、制作局の男性管理職が領収書を番組制作会社に渡し、読売テレビに水増し請求させておよそ1,400万円のキックバックを不正に受け取っていたとして懲戒解雇処分にしたことを発表しています。ところが、立て続けに発覚した系列局での不祥事について、日本テレビの報道番組はほとんど触れることが無かったようです。特に読売テレビ制作の『情報ライブ ミヤネ屋』が報じなかったことで、宮根誠司アナが名指しで批判される事態に。6日後、宮根アナは番組内で謝罪しましたが、あまりにも遅く渋々ながらという印象を拭えません。存続が危ぶまれる『24時間テレビ』『24時間テレビ』は、日本テレビがメディア企業としての社会的な責任を果たす活動の一環と位置づけられ、非常に重要なイベントです。同時に、番組を通じて視聴者に感動や喜びを提供することで視聴者との結びつきを強化し、視聴者や協賛企業と協力して社会貢献活動に参加し、慈善事業に資金を提供するという重要な役割を担っています。『24時間テレビ』の事業報告書・決算報告書などは、公益社団法人24時間テレビチャリティー委員会のウェブサイトに公開され、トップページには[24時間テレビ46年間の寄付金総額] 433億64万3,146円 と表示されています。委員会は日本海テレビでの着服事件について「お詫び」のページを掲載しました。その中で「寄付金の着服は断じて許されることではなく、当委員会としては、日本海テレビに対し、着服された寄付金全額の回収又は同額の補填を強く求める」と言及し、「当委員会を構成する民間放送31社では、皆様からお預かりする寄付金について、さらなる厳重な管理を行い、徹底して再発防止に努めて参ります」としています。しかし、これまでも『24時間テレビ』については、そのあり方についていろいろと指摘されてきました。2013年には写真週刊誌の『フラッシュ』が同番組のタレント別のギャラを公開して大騒ぎとなり、その後も週刊誌などがチャリティ番組としてどうなのかと度々問題提起されてきました。その影響で出演を拒否するタレントさんも増えたとFRIDAY(2018年8月19日)は伝えています。チャリティなのでギャラは要らない、どうしてもというならギャラを寄付すると、全額寄付した出演者もいたといいます。チャリティだからノーギャラでと主張する大物タレントもいれば、ギャラを要求する芸能事務所もあるので、局としても悩ましいところではあるでしょう。『24時間テレビ』には、毎年ジャニーズ事務所の所属タレントの出演も多く、ジャニーズ事務所がギャラを要求していたからなのか?と勘ぐってしまいます。ネットでは出演タレントの過去のTweet(X)画面などを掘り起こして、ギャラを受け取らなかった人を特定して褒め称えたりもしていますので、ますます出演交渉が難しくなっていると思われます。そんな時に寄付金の着服が明らかになったのです。チャリティ募金への不信に繋がるクラウドファンディングやネットでの募金が一般的になり、路上での募金も最近はあまり見かけなくなりました。クラウドファンディングやネット募金はいくら集まったかが一目瞭然です。しかし、その使い道がうやむやになったり、持ち逃げされたりと、本当に正しく使われている?ということも時折問題になっています。『24時間テレビ』は日本テレビが系列局を挙げて全国で中継も交えながら実施しているので、いわば衆人環視の中での募金活動といえます。寄付を募る母体も怪しいところではない、と不安や疑問を抱くこと無く安心して寄付しているはずです。小さなこどもがお小遣いを持ってきて募金箱に入れる場面も映されます。一方で募金箱に入れられる寄付は小銭が中心です。まとまった額を除けば領収書を発行することもありません。集計するまでは募金箱にいくら入っているかもわかりません。それは逆を言えば募金箱や現金が入った袋を移動させる途中で一部を盗んだとしても誰もわかりません。日本海テレビでの寄付金着服は、氷山の一角ではないかという見方も出ています。名乗り出た元局長以外にも、あるいは他局でも同じような管理方法であれば、どこかで誰かに現金を抜き取られている可能性は否定できないのです。2024年の『24時間テレビ』は、少なくとも今まで通りのやり方では実施困難でしょう。現金管理の難しさ12月になると、自民党派閥の政治資金パーティ券収入による裏金問題が浮上しました。パーティ券は手売りもしますから、数が多いうえにアナログな管理では、誰に何枚渡して何枚売れたかを曖昧にすればいくらでも不正ができます。意図的に販売したチケットの枚数をごまかし、お金を環流させれば裏金を作ることもできます。企業間の取引についてはインボイス制度や電子帳票保存法など、お金の流れを追う仕組みは(賛否はさておき)整備されつつありますが、現場での現金の移動については抜け穴が多く、不正や犯罪の温床にもなりかねません。販売業や飲食・サービス業など直接現金を扱う業態だけでなく、コロナ明けで企業活動が活発になった従業員の仮払いや交際費、交通費の立替精算などには目を光らせる必要があります。24時間テレビの寄付金の管理方法に問題があったように、現金を扱う現場のお金の移動途中に不正が起きる余地はないかチェックし、必要に応じた改善を進めましょう。キャッシュレス化を進めることはその第一歩といえます。