2024年は元日から能登半島で最大震度7の大地震、2日には羽田空港でのJAL機と海保機との衝突事故と立て続けに大きな災害・事故が発生しました。多くの犠牲者・被災者の皆さんはもちろんのこと、その家族や関係者だけでなく多くの人が自分事としていろいろな考えを巡らせたお正月になったのではないでしょうか。観測史上6つめ、震度7の大地震にBCP発動大地震も羽田空港の事故も、被害が甚大で現場状況を伝える映像や報道が衝撃的であるためか、周辺で起こっている被害・トラブルはあまり報道されていません。即日新潟県、富山県、石川県、福井県の計35市11町1村に災害救助法の適用を決定し、石川県の19市町と富山県の1市に被災者生活再建支援法の適用が決定された震度7の地震です。政府の非常対策本部が1月11日にまとめた「令和6年能登半島地震に係る被害状況等について」には各省庁の対応状況がまとめられていますが、被害や影響は恐ろしいほどに広範囲に及んでいることがわかります。この報告書を見ると、国がどのようなBCPを準備していたか、各省庁の担当分野では取りこぼしのない支援のためにどのような手順・時間軸で発動、動き始めたかがわかります。正月3が日、仕事していた人も帰省先からの戻りの人も、予定が狂った人は多かったことでしょう。この大地震や事故が平日に起こっていたら? 被災地・現場周辺だけでなく影響の範囲はさらに広範囲になるはずです。首都圏では、企業も個人も大地震に備えた防災グッズの準備や水・食料の備蓄などは進んでいると思います。それでは、平日の日中、出先や移動中に出会うかもしれない突然のアクシデントにはどのように備えると良いでしょう? 列車が線路上で停車したら?能登地震では北陸新幹線の4本の列車が富山駅と金沢駅の間で停止し、動き出すまでの11時間乗客は車内に缶詰になっていました。新幹線が停まるくらいですから在来線の鉄道も停まり、車内に缶詰になった人はいたでしょう。2011年の東日本大震災が発生したのは平日の午後でした。東北新幹線は緊急停止し停電のために動けず、多くの乗客がそのまま列車内で一夜を過ごしています。東京も震度5強の揺れに襲われ、多くの鉄道車両は緊急停止したはずです。ただ、停電しなかったので最寄りの駅までは移動して乗客を降ろすことができたようです。大地震に限らず、鉄道事故や車両故障、停電などで列車が線路上で停車し、乗客が長時間缶詰になったというニュースに接することがあります。車両を近くの駅まで動かすことができれば良いのですが、できないときには乗客は降りて線路上を歩いて避難することになります。ところが、鉄道でも線路に降りて避難できない路線があります。モノレールは車両が空中にあるため駅以外では外に出ることができません。ゆりかもめや舎人ライナーも無人運転ですので、外からの救助を待つ以外ありません。いずれにしても線路上で列車が停止して動けなくなると、長時間そこで過ごすことになります。会社や家族に状況を伝えたり、訪問を予定していたお取引先への連絡などが必要です。通信手段としての携帯電話やスマホは携行しているでしょうが、長時間の缶詰の間にバッテリー切れになる恐れもあります。鞄の中にバックアップのモバイルバッテリーは入れておきましょう。ちなみに飛行機に乗ることが多い私はもしもの事を考え、羽田空港への交通手段はモノレールを使用せず京急を利用しています。飛行機・新幹線は会員登録、スマホアプリ必須2日の羽田空港滑走路上の衝突炎上事故で空港は一時閉鎖となり、翌日まで大混乱が続きました。C滑走路は現場検証と残骸の撤去、滑走路の点検のため閉鎖され、1月8日の再開まで羽田空港発着便のみならず玉突きで全国の航空路線に影響が出ました。飛行機も夏は台風やゲリラ雷雨、冬は爆弾低気圧や降雪の影響、あるいは機材のトラブルなどで突然の欠航や遅延はよくあることです。2日の事故後は羽田空港の航空会社カウンターに長蛇の列ができていましたが、航空会社の会員制度に登録してスマホアプリを入れていた人は、カウンターに並ぶことなく振り替え便の予約ができています。能登地震の影響で北陸新幹線が運休した際にも、ネットで予約していた人はいち早く代替列車の確保ができていました。飛行機や新幹線などを利用する際には、会員登録は必須です。スマホにアプリをダウンロードして会員情報を紐付ければ、カウンターに並ぶことなく予約・変更などができます。羽田~伊丹や福岡、札幌などの幹線路線は複数の航空会社が一日に何往復も飛んでいますから、機材トラブルなどで急に欠航になってもなんとかリカバリーできます。しかし、一日数便しか飛んでいないローカル航路やLCCだけが就航している路線だと、振り替えようと思ってもできません。前後に余裕を持ったスケジュールで移動しましょう。道路情報は「通れた道マップ」でチェック地震に襲われた能登半島では地面の隆起や陥没、土砂崩れなどで道路が寸断されただけでなく、北陸自動車道や関越自動車道などが石川、富山、新潟県内の区間で一時通行止めとなりました。熊本地震でも、土砂崩れや落石で山間部の多くの道路が通行止めとなりました。ラジオで流れる道路交通情報では、高速道路や幹線道路以外の情報はほとんど流されません。東日本大震災を機に、トヨタやHONDAなどの自動車メーカーが、車に積まれた移動体通信データを反映させて「通れた道マップ」を提供するようになりました。その後は各地で起こった災害の際にも有効に利用され、能登の地震でもほぼリアルタイムに更新されています。大きな災害でなくとも、道路の陥没や落石・倒木、あるいは緊急工事など予期せぬ通行止めにでくわすことはあります。車で地方や山間部へ出かける際には、事前に「通れた道マップ」をチェックする一手間は惜しまないことです。閉じ込めもありえるエレベーターの停止能登の地震ではビルのエレベーターが停止し、閉じ込められた人は一定数いると思われます。全国放送や全国紙では報じられませんが、地元紙では射水市の新湊大橋の自歩道用エレベーターが停止し7人が閉じ込められたことなどを報じています。「令和6年能登半島地震に係る被害状況等について」によると閉じ込めが14件(石川県7件、新潟県1件、富山県1件、群馬県1件、愛知県2件、大阪府2件)発生したとあり、遠く離れた大阪や愛知でも閉じ込めが発生しています。ちなみに、大阪では昨年5月にも石川県で最大震度6強を記録した地震の際、あべのハルカスのエレベーターが停止しています。少し遡って2018年の大阪府北部地震では66,000基ものエレベーターが緊急停止し、339件の閉じ込めがありました。新しいビルのエレベーターの多くには地震の初期微動(P波)を感知して自動停止する機能が備わり、近くの階で停まってドアが開くようになっています。もしも古いビルなどでエレベーターが停止して閉じ込められてもパニックにならず、また、無理に脱出しようと考えず落ち着いて外と連絡を取りながら救助を待つようにしてください。ITの活用でリスクを減らす働き方へリモートワークやオンラインミーティングを拡大することは、地震大国日本においては従業員の安全やBCPを考えるうえでも理にかなった選択と言えます。また、従業員の安否確認も、NTTグループなどが提供する安否確認サービスなどを活用すれば、設定した震度以上の地震が発生した際、自動で安否確認依頼を配信し、回答も自動集計してくれるので災害発生時の管理者の負担を軽減することができます。ITを積極的に取り入れることは、従業員の安全にも寄与することになります。