とうとう日経平均がバブル最高値を超えたというのに年初の大地震、航空機衝突事故から始まり、2月にはGDPがドイツに抜かれて世界第4位となるなど2024年は出だしからあまり明るい話題がありません。日経平均株価はバブル期の最高値を34年ぶりに超えましたが、一般消費者の生活はバブル時のような景気良さとはほど遠く、二極化は広がるばかりです。庶民には景気のいい話は伝わってきません。日本中がなんとなく漠然とした不安を抱きながら暮らしているという感じでしょうか。雨晴れて傘を忘れる、の繰り返しこれまでも大きな自然災害が発生するたびに災害への備えが呼びかけられ、ホームセンターなどでは防災グッズの売れ行きが上がります。しかしそれも一時的なもので、すぐに日常に戻ってしまいます。能登半島地震の直後、株式会社AlbaLinkが全国の男女500人を対象に「地震・津波などの災害に備えていることに関する意識調査」を実施し発表しました。このアンケート結果でも、備えていない理由に「継続するのが難しい」「自分の住んでいる地域は大丈夫だろう」などの回答が見られます。このような意識調査はこれまでも大きな地震が起きるたびに実施されていますが、意識に大きな変化はありません。しかし、大地震が起きた場所の地域特性や季節などにより報道で伝わってくる被災地の状況はそれぞれで違い、その度に新たな気づき(求める支援内容やボランティアのタイミングなど)を蓄積していることもうかがえます。石川県や富山県は2020年までは長い間地震が少ない県と言われていました。2021年以降急に地震が頻発した石川県では、ハザードマップの見直しや地震に備える準備が遅れたことについて県や知事に対し非難する声も上がっています。住民も災害リスクが少ないと言われ続けてきたので、地震へ備える意識は高まらないままでした。実際、建物の耐震補強は遅れ、耐震強度は上がらず、多くの建物が倒壊してしまいました。加えて半島という地理的なデメリットや高齢化が進んだ過疎地であったことから、現地の情報がなかなか掴めない、被災地にたどり着けないなどで支援が行き届かなかったことなどが報じられています。一方で、孤立した山間部などでは農業などの一次産業に従事する住民も多く、インフラがストップしても隣近所の人たちでビニールハウスに身を寄せ合って自給しながら助けを待つなど、コミュニティの強さも見られました。大都市を大地震が襲う日は必ずやって来る能登半島地震の被災地の状況を伝える報道が続く一方3月11日を間近に控え、次に来る大地震に備えるよう訴える記事やコラムが増えてきました。1月末のDIAMOND online には元文春編集長:木俣正剛氏が「次は富士山の大噴火」は本当か?調べてわかった現状と“不安な備え”というタイトルで寄稿しています。2月11日の日経新聞は 「一億人の未来図」で、人口減でも7割に災害リスク 2050年、東京95%に上昇という記事を掲載し、2月20日のニューズウィーク日本版には、外交アナリストの河東哲夫氏が南海トラフ巨大地震で日本を失わないためにというコラムを書いています。首都直下型地震や南海トラフ巨大地震が発生すると、人口が集中した大都会を直撃します。日経新聞の記事によれば、東京都や愛知県は人口の9割以上が、大阪府でも7割以上の人が災害リスク地域に住んでいます。首都直下型地震も南海トラフ地震も、さらには富士山の大噴火も、統計的にはいつ発生してもおかしくない状況です。災害リスク地域に住み、そこで働いている人も企業もそのリスクを意識し、備えなくてはなりません。大地震が来ることを「想定していなかった」は認められないのです。安全を確保して事業所内に72時間留まれる備えを都市に事業所を置く企業が地震に備えて準備するべきことを7つ拾ってみました。建物の耐震性の確保-自社ビルであれば建築基準法に従った耐震強度を備えているか。強度が不足していれば補強や、建て替えを検討する必要があるでしょう。ビルテナントとして入居しているのなら、ビルの耐震強度について確認し、耐震性が確保されていなければ移転も視野にいれるべきです。特に高層ビルは設計上の耐震性だけでなく、点検・メンテナンスが行われているかも確認する必要があります。長周期地震動では高層階が大きく揺れて机や棚、FAX複合機などの重い物が移動したり物が飛んできたりして、挟まれたり飛散した物で怪我をしたりする危険もあります。キャスターロックのかけ忘れが思わぬ事故につながることもあります。 非常災害対策の策定-地震発生時の非常対策計画を策定し、従業員に周知徹底する必要があります。避難経路や避難場所、非常用品の保管場所などを示したり、緊急連絡先を整備することが重要です。東日本大震災が発生した当日、交通インフラがストップした首都圏は帰宅困難者で溢れ、さらなる交通障害や緊急車両の活動を妨げることになりました。それ以来、大災害発生時には移動・帰宅せずその場に留まることが推奨されています。オフィスなどには自社従業員だけでなく帰宅困難者の受け入れを呼びかけています。東京都では、オフィス内などで72時間滞在可能な備えを勧めています。東京都帰宅困難者対策ページ 緊急対応訓練-定期的に緊急時の対応訓練を実施し、従業員が地震やその他の災害時にどのように行動すべきかを理解し、慣れておく必要があります。非常時防災リーダーを任命し、リーダーの指示のもと混乱無く動けるよう訓練を重ねましょう。羽田空港で衝突炎上した日航機からは、乗客乗員全員が無事に脱出できました。海外でも奇跡の脱出劇だと賞賛されていますが、これも日頃の訓練があったからこその結果です。いつ訪れるかもわからない「もしも」に真剣に取り組み、準備することの大切さを見せつけてくれました。 通信手段の確保-緊急時に従業員同士や関係者との連絡が取れる手段を確保するため、携帯電話や無線機などの通信手段を用意し、常に充電されているようにしておくことが重要です。BCPの策定-災害発生時でも業務を継続できるよう、重要拠点やバックアップを複数に分散させたりリモートワークでも業務継続が可能な体制を策定し、従業員に適切な手順を周知させることが重要です。地震保険の検討-万が一の被害に備え、自社ビルなどの不動産だけでなく、動産や従業員の怪我などに対しても保険で備える方法があります。 非常用品の備蓄-地震発生時に電力や水道が停止する可能性があります。前述の通り、東京都では帰宅せず72時間留まることを推奨しています。非常用の飲料水や非常食の備蓄を行うことが重要です。また、懐中電灯やラジオ、毛布なども備えておくことが望まれます。これ以外にも、それぞれの事業所が立地する場所や事業内容などで備えなければならないことは変わってきます。東京都帰宅困難者対策ハンドブックに具体的、詳細に説明されています。東京都に限らず都市で事業を営む企業やその従業員は参考にするべき内容です。社内で大災害の対応シミュレーションをする際などには大いに参考になるでしょう。大都市の大地震は、もはや想定外が許されないリスクとなりました。何も準備せずにその日が来て従業員や取引先に被害が及んだ場合、不作為を問われるリスクがあることを肝に銘じておきましょう。