災害や景気悪化などで経営が苦しくなったりDX化や生産性の向上、販路拡大などのために資金が必要な企業に対し、政府や自治体は様々な補助金や支援金制度を用意しています。一方これら、助成金や補助金の申請サポートは一大ビジネスとなっていてトラブルや不正も多く発生しています。数多く存在する補助金や助成金制度コロナ禍で誰もが先を見通せなくなった時には、事業復活支援金や家賃補助、雇用調整助成金などを利用して多くの企業が苦境を乗り切りました。コロナ禍が明けると今度は、景気の回復と地政学リスクに伴う世界的インフレ、消費動向の変化や人材不足など新たな対応に迫られます。そのような変化に対応する企業に対して、事業再構築補助金、ものづくり補助金、IT導入補助金、小規模事業者持続化補助金などの他、全国の自治体でも各種助成金などの支援制度が用意されています。BCP策定を支援する補助金などもあります。独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営するJ-NET21では企業経営や創業に役立つ国・都道府県の支援情報(補助金・助成金、セミナー・イベントなど)がまとめて検索できます。しかし、これらの制度は種類も多くあまり知られていないのが実情で、必要としている経営者になかなか情報が届きません。消費者金融の過払い金請求やB型肝炎給付金のように、弁護士事務所や司法書士事務所がテレビなどで広く宣伝をすれば知れ渡るのでしょうが、それぞれの助成金や支援制度は国や自治体が宣伝にお金を掛けることは希です。特にIT化が遅れている中小企業は、インターネットなどを使った情報収集に不慣れで情報が行き届きません。今も摘発が続いているコロナ禍の事業復活支援金の不正受給事業再構築補助金では経費補助率1/3~3/4、最大1.5億円(枠や企業規模で異なる)まで補助します。そこで、そのような中小企業をターゲットに補助金の申請代行や助成金の報告書作成サポートなど謳うコンサルタントや企業が多数存在し、盛んに営業をかけています。たとえば、「事業再構築補助金 申請代行」で検索をすると、約31万件の検索結果とともに多くの「スポンサー」と表示された広告が表示されます。ネット広告だけでなくIT化が遅れている中小企業には、FAXでの案内や電話での営業も盛んに行われています。もちろん、ウェブサイトを持っている企業には、問い合わせフォームからの案内は当たり前です。熾烈な顧客の奪い合いが繰り広げられています。コロナ禍における事業復活支援金や家賃補助、雇用調整助成金は緊急性を要するということで、早く現金を支給するために申請は比較的簡素な申請書と添付資料で済みました。そのため、不正を指南して歩合を要求する怪しいコンサルや申請代行業者が現れ、中には国税局のOBや税理士もいて世間を驚かせました。その結果、申請書類の偽造や虚偽の申請で多くの不正受給が行われ、いまだに摘発が続き不正受給者を公表されています。補助金を受け取るまでの長い道のり一般的な支援制度では申請時に様々な書類と共に事業計画書の提出が必要で、事業終了時の完了報告書の審査をもって最終的な支援額が決定します。事業再構築補助金に事業申請するには、「GビズIDプライムアカウント」の取得が必要です。ITに疎い企業はまずここで躓いてしまいます。アカウントはなんとか取得しても最初の申請段階で膨大な書類と事業計画書の提出が必要で申請書をまとめるのも大変です。締め切りまでになんとか提出書類を揃えても、審査を通過できるのは半分ほどです。そこで申請代行や申請サポート企業に依頼を考えます。採択されれば大きな額を補助されることが期待できるので、多少の手数料には目をつぶります。ところが、補助金を受け取れるのは事業完了後、事業実施後報告書を提出し、補助額が確定した後の精算です。設定した期限までに補助事業実績報告書が提出されなかった場合、交付決定が取り消されます。第11回事業再構築補助金 公募要領の冒頭にも【重要】としてその経費等の内容を事務局で補助対象経費として適切なものであるかどうかの精査を行います。精査の結果次第では、交付決定額が、応募申請時に計上している補助金申請額から減額または、全額対象外となる場合もあります。と明記してあります。さらに、高額な成功報酬等にご注意事業計画の検討に際して外部の支援を受ける場合には、提供するサービスの内容とかい離した高額な成功報酬等を請求する悪質な業者等にご注意ください。との注意喚起も記してあります。ネットで調べると、申請代行やコンサルの相場はだいたい着手金で10万円前後+成功報酬(採択額の5%~20%)というところです。しかし、中には悪徳な業者もいて、着手金だけ受け取って後のサポートはいい加減だったり、採択が決定した段階で成功報酬を受け取りあとはほったらかしで最終的な事業実施報告書が提出できなかったり、補助額が採択額から大幅に減額されたりということもあるようです。また事業終了後補助金を受け取った後も、以降5年間、事業化状況・知的財産権等報告書により報告しなければなりません。事業化状況等の報告が行われない場合には、補助金の交付取消・返還等が求められることがあるとあります。そこまできちんとサポートしてくれるでしょうか。外部の専門家に頼る場合には最後まで責任持ってサポートできるのか、信頼できるかを事前によく調べる必要があります。採択されたからといって安心はできません。事業再構築補助金事務局の元職員が情報を不正に持ち出し営業のリストに事業再構築補助金は、中小企業等事業再構築促進事業の一環です。事務局業務は株式会社パソナが受託して運用されています。その事務局のパソナ元職員(派遣社員)が業務上知り得たメールアドレスに対し営業メールを送信した事実が確認され、昨年末に事務局であるパソナと独立行政法人 中小企業基盤整備機構からリリースが配信されました。「中小企業等事業再構築促進事業」における採択者情報の不正持出の疑いについてこのリリースによると、元職員のパソコンには同補助金の採択者約7万5千者の情報を保存・閲覧していたことが確認され、当該パソコンより何らかのファイルが持ち出された痕跡があるということです。当該元職員は補助金支援の営業ウェブサイトを運営しており、当人が事務局業務において関わっていた補助金採択者に対して営業メールを送ったものです。前述の通り採択されても補助金受給にいたるまでは長い道のりです。メールは採択事業者に対し、事業実施報告書を提出して補助額決定までの申請を支援するという内容だったようです。補助金採択者のリストは、優良な営業リストとなります。補助金申請支援サポートを成功報酬の歩合で受け取るならば、申請金額の高い採択者に絞ってアプローチすれば効率良く営業できます。補助金支援のサイトを立ち上げ、営業リストを手に入れる目的で事務局職員になったとしたら、用意周到です。補助金や助成金は上手に活用すべきですが、そこで動くお金が大きいだけにそれに群がる怪しい輩も多くいます。ここでも慎重にパートナー選びをすることが重要です。わからないから・難しいからと丸投げをしていると弱みにつけ込まれ、いいように利用されかねません。