3月14日、札幌高裁は同性婚を認めていない民法などの規定は憲法に違反するとする判決を下しました。これまで、地裁では同様の判決がありましたが、高裁では初めての判決です。続けて3月26日には、犯罪被害者給付金は「同性カップルも受給できる」と最高裁が初の判断を下しました。国の法制化を待たず先に進む社会の現実朝日新聞デジタルの記事によると世界の37カ国・地域で法的に認められ、欧州連合(EU)では、加盟27カ国のうち、16カ国ですでに法制化され、主要7カ国(G7)で同性カップルへの法的保障がないのは日本だけとあります。国内でも自治体が同性カップルの関係を公的に認める「パートナーシップ制度」が急速に広がっています。3月1日現在では、「パートナーシップ制度」を取り入れている自治体は397、人口の8割余りをカバーしているといいます。 社会的にはLGBTに対する差別や偏見を是正する動きが進み、企業にも様々な取り組み・制度が広がっています。東京都では「性的マイノリティに関する企業向けポータルサイト」を開設し、「性自認及び性的指向に関する企業研修」「LGBTフレンドリーを目指す事業者向け訪問支援事業」などを案内・実施しています。これらを利用済みの企業が「LGBTフレンドリー宣言」をすると、サイトにLGBTフレンドリー宣言企業として掲載しています。東京都以外でも、独自に「LGBTフレンドリー宣言」や「LGBTQ+フレンドリー企業宣言」をする企業は増え続けています。このような動きを背景に、同性向けパートナーシップ証明書を発行するサービスも始まりました。Famieeの証明書は、受入表明をしている全国の自治体・企業等で利用することができます。ダイバーシティ求人サイトJobRainbowには、LGBTフレンドリー&ダイバーシティ推進企業が400社以上登録してあり、企業のダイバーシティ対応状況を5つの指標で各5点、合計25点満点で数値化しています。これらは働きやすさの一つの指標ともなり、LGBTにフレンドリーでダイバーシティ推進に積極的な企業は求人にも有利に働きます。いまだにJIS規格の履歴書を要求する企業って?歴史ある企業や経営者が高齢で古い体質の企業にいまだ根強く残る性別による役割分担意識。LGBTへの理解どころか性別や国籍、学歴、出身地など、あらゆることにバイアスを掛けようとします。履歴書については新たな様式例(厚労省様式)が推奨されるようになり、厚労省様式では性別欄については「記載は任意です。未記載とすることも可能です」となっています。しかし、いまだにJIS規格の履歴書提出を求める企業もあるようです。JIS規格では性別欄は男女どちらかの性別を○で囲む形式です。ところが、実はJIS規格の履歴書は2020年に同協会のサイトから削除されています。しかし、JIS規格の履歴書提出を求める企業があることから、多くの転職支援サイトなどではJIS規格の履歴書がダウンロードできます。JIS規格の履歴書提出を求めるというだけで、なんとなくその企業風土がうかがえる気がしませんか。いずれにしても、日本では市販の物にせよダウンロードするにせよ、テンプレートに沿った型にはまった履歴書が一般的に使われています。対してアメリカで履歴書といえば決まった書式もテンプレートもなく、顔写真も求められません。履歴書に求められるのは、名前と職歴・スキル(何ができるか)です。人種・性別・年齢・婚姻や家族は仕事の能力には関係ないという考え方です。ハラスメントの対極にあるもの男性や女性に対するステレオタイプや偏見、差別が存在する環境では、特に職場でのハラスメントが起こりやすくなります。更に、男性中心の組織文化やリーダーシップスタイルが浸透しているような環境では、ジェンダーに基づくハラスメントが許容されやすくなります。マタハラやパタハラ(育休の取得を認めない、育休の取得や時短勤務を理由に嫌がらせ、待遇や昇進に差を付けるなど)はしばしば組織文化や風土に根ざし、それが当然のように受け入れられる可能性があります。固定的な性別役割分担意識や性差に関する偏見、無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)が支配する組織は、働きづらい職場になりがちです。もちろん、LGBTへの理解も進みません。対して、ジェンダー問題に取り組み、多様性を受け入れる企業は、従業員を人種や性別・学歴などの属性ではなく仕事・成果を見て評価します。そのような企業の多くは同性パートナーシップ制度やLGBTに対する福利厚生やサポート体制も充実させています。LGBTに対する理解と受容が進むことで、職場の多様性が豊かになり、従業員の満足度や生産性も向上すると期待されています。多様性を受け入れ、フラットな組織の企業が増えていく中で、旧態依然とした組織風土の企業は優秀な人材の確保に苦労することは目に見えています。ますます人材確保が難しくなるこれからは正社員の新卒・中途採用だけでなく、アルバイトも外国人も、あるいは技能実習生も売り手市場になっていきます。働く人の意識は大きく変化しています。選ばれる企業にならなければ慢性的な人手不足は解消されず、いずれは業績にも影響を及ぼします。まず企業はハラスメントを明確に禁止するポリシーやガイドラインを策定し、従業員に周知徹底することが重要です。これにより、従業員がどのような行動が許容されていないかを理解しやすくなります。また、ハラスメントの報告手続きを明確にし、従業員が安心して問題を報告できる環境を整備する必要があります。報告された問題に対して公正な調査と処理を行うことも重要です。そして何よりも経営トップの意識改革と行動です。従業員に対して模範となる行動を示し、問題が発生した場合には適切に対処することが求められます。