SNSの不適切書き込みで活動休止に8月11日、タレントでYouTuberのフワちゃんが芸能活動の休止を発表しました。お笑い芸人のやす子さんがXでつぶやいた「やす子オリンピック 生きてるだけで偉いので皆 優勝でーす」というポストに対し、「おまえは偉くないので、死んでくださーい 予選敗退でーす」という引用リポストをした事に対して批判が殺到。すぐに削除、謝罪したものの、GoogleなどCMスポンサーが激怒しているなどの反応もあり、レギュラー番組は全て打ち切りになりました。他にも、2025年版の中学の教科書に掲載予定だったフワちゃんの写真を削除するよう、出版社が文科省に訂正申請を行うなど影響は多方面に及んでいます。この騒動を受けて、様々なメディアやSNSで過去の行状や評判を掘り起こして「それみたことか」といわんばかりに批判をしています。仲が良いと言われていた友人知人も今度ばかりは擁護できず、火の粉が飛んでくるのを恐れてか多くは沈黙しています。 問題行動の連続で所属事務所をクビにそもそも、私はフワちゃんについてほとんど知らない(CMや見るともなく見たバラエティ番組で見た程度)ので調べてみると、プロフィールやこれまでの活動歴だけでなく、持病や貯蓄額、パスワードなどの「個人情報」までもがフワちゃんのオフィシャルサイトに細かく記載してあります。巧みなセルフプロデュースと押しの強さで、芸能界に今のポジションを獲得したことがわかります。普通なら、所属事務所のサイトの中にタレントのプロフィールなどを紹介するものですが、フワちゃんはフリー。サイトの「フワちゃんの歩み」によると、2014年ワタナベエンターテインメントからコンビ芸人「SF世紀宇宙の子」として芸能界デビュー。しかし2017年に度重なる素行不良でコンビ解散、更には上司に中指を立てたことで事務所を「クビ」になっています。クビに至る経緯については東スポWEBで「大前提にあるのがフワちゃんの〝問題児ぶり〟」と指摘しています。ワタナベエンターテインメント社は、積もり積もったフワちゃんの問題行動に業を煮やし、とうとう「中指立て」の一件で堪忍袋の緒が切れたというところでしょう。芸能人の不祥事が明らかになると、すぐに「○億円の賠償」など当人や事務所への金銭的な損失補填の問題も話題になります。今回の騒動で、ワタナベエンターテインメント社は「あのときにクビにしておいて良かった」と胸をなで下ろしているのでしょうか?企業においても「問題児」の扱いに手を焼くという話は珍しい話ではありません。パワハラやセクハラなどのハラスメント常習者には最近厳しい目を向けられますが、遅刻の常習犯だったり、上司の目を盗んでは仕事をさぼったり、会社の物を勝手に持ち出したり私的に使ったりと、一つ一つは些細ではあるけれど日常の行動に問題がある従業員は珍しくありません。それを放置したあげくに事故や事件を引き起こすということもあります。フワちゃんも、過去に遅刻騒動や不適切な言動などが度々問題として報道されていました。ワタナベエンターテインメント社在籍中には何度も改善指導・要求していたはずです。しかし改善されなかったので会社のリスクと受け止めて契約解除に至ったのでしょう。今回の「不適切投稿」の予兆は充分にあったはずですが、フリーとなってしまったので指摘、叱責、誡める者が誰もいなかったのでしょう。芸能事務所のクビは、マネジメント契約の解除ですから、普通の企業の解雇とは少し違います。一般企業で部下が上司に「中指を立てた」ことを理由に解雇することは相当に無理があります。しかし、フワちゃんのように遅刻が多い、お客様にため口をきいたり仕事を約束どおりできずに度々クレームが寄せられるようなら、そのまま雇用し続けることは会社にとってもリスクを抱え続けることになります。このような従業員を持ったら、会社はどのような対応が取れるのでしょうか。立場が弱い従業員や個人が組織と交渉するための労働組合立場を変えて、従業員(労働者)が企業からの不当な扱いや労働環境改善を求める場合には、一人では相手にしてもらえないので、団体を組織して労働組合が交渉に当たります。1980年代までは、労働組合の組織率も高く活動も活発でした。国鉄労組や私鉄労連が賃上げや労働条件の改善を求めてゼネラルストライキを敢行したり、組合員の解雇を巡って「不当解雇だ」と撤回を求めてストライキやデモ行進を実施するなどということも日常で見られました。しかし、バブル崩壊後は雇用維持が重要となり、目に見える形での労働争議はほとんど聞かなくなりました。一方、中小企業で働く人は企業内労組が無いことが多く、個人でユニオン(労働組合、あるいは合同労組)に加盟したり、解雇、ハラスメント、賃金未払いなどの深刻な労働問題に直面したときにユニオンに駆け込むということになります。ユニオンが主体となった労働争議と言えば、アメリカではサブスク配信での2次利用時のギャラの改善やAIの普及による仕事への影響に対して、俳優や脚本家が加盟するユニオンが合同ストライキを起こし、映画の制作がストップするということもありました。日本でもパワハラやセクハラ、不当解雇だと企業に対して訴訟を起こす際にユニオンの代表が同席して記者会見を行う様子をTVなどで見るようになりました。個人や中小企業、あるいは病院や社会福祉施設などに勤めて労働組合に加盟していなくても、ユニオンに駆け込めば相談に乗ってもらえるということが徐々に知られるようになり、個人で加盟する人も増えているようです。フワちゃんのような問題児はどうすればいい?労働契約法第16条では、解雇が認められる用件を定めており、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして解雇は無効となります。仮に上司に中指を立てたことで解雇され、労組(またはユニオン)に駆け込めば解雇の撤回を求めて団体交渉に臨むことになります。当然ながら会社に対し「客観的に合理的な解雇理由」を示すよう要求してきます。中指を立てた事だけが解雇理由ではないのですが、それを客観的に示せなければなりません。 客観的に合理的な解雇理由を提示するためには、まず雇用契約・就業規則が整備され、就業規則には懲戒規定が定められ、どのような場合に解雇となるかも示されていなければなりません。業種や企業規模などにより、懲戒の対象となる事象や行動は変わってきます。リモートワークや副業が認められるようになった今、業務上のミスや不祥事だけでなく、プライベートでの事故(飲酒運転で人身事故)や事件に関わった(大麻所持やSNSでの誹謗中傷など)場合は懲戒の対象になるのかなども記載しておく必要があります。就業規則・懲戒規定が周知された上で(該当)従業員の問題点を指摘し話し合う、改善を求めるなど教育・指導が求められます。しかし、それでも改善が見られないようなら懲戒処分や異動・配置転換などの処置が必要になるでしょう。最悪、解雇とする場合には会社としても向き合って来たことを客観的に示す必要があります。そのためには日常業務での不適切行動や言動などを記録し、どのような指導をしたかも合わせて記載しておく必要があります。それも、短期ではなく長期間の記録が必要になる事は覚悟しておきましょう。