10月24日、Yogibo(ヨギボー)の男性社員が大阪市内で弁護士を伴って記者会見しました。そこで会社と会長をパワハラで提訴したことを明らかにし、メディアが一斉に報じました。訴えを起こした社員は、パワハラが原因で適応障害を起こし休職を余儀なくされたうえ、不当な処分を受けたとしています。提訴は8月で、およそ1180万円の損害賠償や処分(降格)の無効を求めています。 昨年9月の長期出張中に受けたパワハラで提訴会見で語られたパワハラの具体的内容は、昨年の出張でのやりとりでした。男性社員は昨年9月、当時、社長だった木村会長のアメリカ出張に1カ月近く同行し、連日の会議で通訳を務めることに。その内容を巡り、木村会長が「100%の精度でできると保証しないお前はなめている」などと叱責したといいます。男性社員は会議をセッティングしただけで本業の通訳ではないのに、一日10時間ほど通訳することもあったと訴えています。叱責と長時間労働がたたり、体調を崩したため帰国すると「職場放棄」に該当するとされ、降格の懲戒処分を受けたということです。この会見・提訴を受け、Yogiboは、「パワハラの事実はないので、争っていきます。長時間労働については、不正な勤怠情報の登録を確認したので、勤務データを精査しているところです」とコメントしています。 販売代理店のIT企業が本社を買収Yogiboといえば「人をダメにするソファ」といわれるビーズソファの筆頭ブランド。Yogiboでは「快適すぎて動けなくなる魔法のソファ」として展開しています。元競走馬のアドマイヤジャパンが、Yogiboで気持ちよさそうに寝るCMも話題になりました。Yogiboはもともとアメリカの会社のブランドでしたが、ドロップシッピングサービスなどを手がけるIT企業の株式会社ウェブシャークが、2014年に米国Yogibo社と日本総代理店契約を結び日本での販売をスタート。順調に店舗数を拡大し、2021年、ついには米国Yogibo LLC社を買収し販売代理店が本社を買収したと話題になりました。そして株式会社ウェブシャークは2022年に株式会社Yogiboに社名変更して現在に至ります。アメリカのYogiboと日本総代理店契約を結び日本第1号店を大阪にオープンしたのは2015年です。この10年の間にそれまで手がけていたEC関連サービスは次々と終了し、IT企業からYogiboの販売に専念。日経クロストレンドの記事によれば、アメリカ、日本だけでなくカナダや韓国、台湾、タイ、シンガポールなど海外にも展開し、2022年7月期の売り上げは212億円と順調に伸びています。 この10年で業態の転換と共に従業員も入れ替わり、更には販売網と売り上げの拡大に伴って急激に人の数も膨らんだはずです。このような拡大期には、就業規則や懲戒規定などの人事面の整備が追いつかない、ガバナンスが乱れるなど組織と人のアンマッチによる負の一面も出やすくなります。売り上げ拡大を優先するあまり、目の前の不都合に目をつぶったり先送りしながら、ごまかしごまかしの組織運営となる会社も少なくありません。 訴えられた会長がXで反論記者会見の翌日、訴えられた木村誠司会長は自身のSNS(X アカウントは@TaishoYogibo)で、「報道されている件について」という書き出しで長文の反論を投稿しています。そこには、・彼は、「通訳、翻訳を行う」経歴があったとアピールをして採用され、社長やその他幹部との海外出張中は通訳業務をしていた。・彼の通訳の問題は「私が全く言っていないことを通訳である彼が独断で言ってしまう」というレベルのものであり、それについて注意していた。彼に「シンプルに直訳してくれ」とお願いしたことは何度もあるが「100%」など不可能なことは言っていない。・出張の最終盤、他の従業員に「自分が将来的にアメリカで仕事をする際に、仕事をしやすくするためにあえて意味の異なる通訳をしている」という趣旨の発言をしたそう。などと記しています。更に記者会見で男性社員が受けた叱責の例として弁護士が語った「お前なめてんのか。俺を誰だと思っているんだ、ヨギボーの社長だぞ」について、追伸として私は関西人なので、もし言うなら「Yogiboの社長やで??」です。と書いています。また、ネットでは「ジャンポケ斉藤と同じ香り」などと書かれていることを意識してか、確かに文字にすると「斉藤さん」感はありますね。と締めくくっています。 裁判の行方を見守るしかないものの……男性社員の訴えに対して正反対の主張を展開した会長の投稿。多くのコメントがついていますが、会長を擁護するコメントの多くはYogiboがスポンサーになって大会運営されている格闘技のファン、そして同じように部下の事で頭を抱える経営者です。投稿の終盤、「最後に」としてハラスメントに関する考えを綴った後、今回の件は裁判でしっかりと争い結論を出したいと思います。ご期待くださいと言うのも変ですが、同じ課題を抱える法人個人の皆様の為にも頑張りますのでご支持頂ける方はどうぞ応援よろしくお願い致します。と書いています。「同じ課題を抱える法人個人の皆様の為にも頑張ります」に呼応したのでしょう。以前のコラム「フワちゃんのSNS炎上から学ぶ!問題社員との付き合い方」でも触れましたが、問題社員に悩む経営者も少なくありません。男性社員の訴えの通りパワハラ会長なのか、あるいは会長の投稿の通りの問題社員なのかは、やはり投稿のコメントにも多くあったように、司法の手に委ねるしかありません。更に付け加えるなら、SNSでの反論投稿は控えるべきだったでしょう。兵庫県知事の内部告発の騒動のように、感情にまかせた反論は混乱を生むばかりです。