03から始まる電話着信なのに国際電話つい先日、地下鉄に乗っていると携帯電話に着信があり、取らずに一度は切ったのですが、間を置かずに再びかかってきます。表示された番号を見ると、「+82」から始まっています。怪しいので無視していたのですが、気付かない間に再び着信と留守番電話が残っていました。着信は「03」から始まる電話番号。留守電を確認すると、韓国釜山の領事館から日本の外務省を経由してかけているといい、折り返しが欲しいとのことでした。念のために電話番号検索をすると、在外公館からの中継専用電話とあります。03の番号に折り返すと、「こちらは、外務省在外公館からの中継専用番号です…」と確かにアナウンスされます。怪しい番号ではないことが確認できたので、改めて「+82」からの番号に折り返すと、釜山の日本領事館に繋がりました。外務省で利用している中継システムは、かけた側からその転送先を任意に設定し、中継した番号(あるいは任意の番号)を表示させて繋ぐようにできるシステムということでしょう。なぜ、行ったことも無い釜山の領事館から電話がかかってきたのかというと、釜山国際映画祭に出かけていた友人が盗難にあい、帰国するすべを無くして領事館に駆け込み私に助けを求めてきたのでした。領事館の方と連携をとり、彼は無事に帰国できたのです。 海外からも携帯からも日本の国内番号に変換できるこの経験から、ルフィなどの特殊詐欺グループが海外から電話してきているのに、不審に思わず電話に出て詐欺にあう被害者が絶えない理由が理解できました。日本の番号に変換してかけているグループが存在しているのでしょう。考えてみれば、かかってきた電話を転送するサービスは、NTTなどでも従来からあります。ただ、発信元の表示番号設定を制限なく可能にすると「なりすまし」や「番号の偽装」が容易にできることになるので、電気通信事業法で厳しく規制されています。それから間もなく、「電話転送サービスを詐欺グループに提供した疑い 会社員ら逮捕」というニュースを目にします。携帯電話からかけても「03」の市外局番が相手側に表示される電話転送サービスを、犯罪に使われると知りながら特殊詐欺グループに提供した疑いで逮捕されたというものです。警察は、「闇バイト」によって犯罪用の機器を準備する、いわゆる「道具屋」の役割を担っていたとみて調べていると伝えています。電気通信事業法で禁止されている行為を行う、あるいはサービスを提供する「闇の業者」=「道具屋」が存在しているということです。 発信者番号を変えられるスマホアプリもそれだけではありません。今回の体験や報道をきっかけにいろいろ調べると、本来の発信者番号を表示せずに違う番号を表示させる(任意の番号を設定できるかは不明ですが、少なくとも自分の番号を知らせたくない場合に利用を推奨)スマホアプリもありました。朝日新聞で報じられた「『警官アダチ』と5日間電話、消えた800万円 若者も狙う特殊詐欺」は、このようなアプリを利用して警察の番号に似た番号を設定して海外からかけていたのではないかと思われます。これまでも偽電話による特殊詐欺被害に遭わないために、知らない番号からの電話には出ないとか、着信の番号をネット検索などで確認することなどが推奨されていました。しかし、表示される電話番号自体が実在する正しい物だと信じざるを得ません。実際に電話番号を偽装したなりすましによる詐欺被害は世界的に広まっているようです。例えば、在ニューヨーク日本総領事館が在留邦人に向け【注意喚起】実在する警察等の電話番号を偽装した詐欺事案を発出しています。●最近、携帯電話に警察等の電話番号を偽装表示させ、警察や社会保障局といった公的機関の職員をかたり、お金を振り込ませようとする詐欺事案が複数報告されています。●同様のなりすましの詐欺事案は、日本国内でも多く報告されるなど、全世界的に発生していますので、十分御注意ください。こうなると、表示された電話番号自体が信じられなくなってきます。 メールやサイトは本物そっくりにコピーされてメールも、金融機関やカード会社、宅配便やECサイトなどのなりすましや偽装のフィッシングメールがたくさん届きますが、年々巧妙になってきています。Htmlメールなどはロゴマークやメールの体裁もそっくりにまねて、パッと見た目では本物と区別が付かないくらいです。発信元のメールアドレスにしても、メール配信サービスで任意のメールアドレスを発信元に設定できるように、偽メールを本物のメールアドレスから発信したように偽装することも可能です。金融機関やカード会社からの注意喚起のメールも同じくたくさん届くので、なおさら混乱してしまっています。偽装メールから誘導されるサイトも本物そっくりで見分けが付かないほどに完全にコピーされています。唯一違うのはURLくらいではないでしょうか。なりすましや偽装に騙されないために電話にしてもメールにしても、知らない相手からかかってきたり届いたりした物にそのまま反応するのは危険な時代となりました。電話口の声もオンライン会議の相手の顔も、ひょっとすると生成AIで偽装されているかもしれません。冒頭で紹介した釜山領事館からの電話ですが、友人を帰国させるためには日本からお金を送金しなければならないというものでした。当然、これは新手の詐欺かもしれないと警戒しました。電話が繋がった先も本当に領事館なのかも半信半疑です。言われるままにお金を送金すると、お年寄りが騙されるオレオレ詐欺と何ら変わりありません。電話で話しながら手元ではネット検索して釜山領事館の公式サイトを確認したり、電話口の職員の方の名前を伺い、外務省に問い合わせをしたり。領事館へ問い合わせメールを送って返信してもらったりと、数多くのやりとりをして間違いないことを確認しました。顔の見えないデジタルコミュニケーションが中心の現代では、悲しいことですが受動的なアプローチに関しては先ず疑い、一呼吸を置いて(単純な返信ではなく、相手を確かめてから)改めてこちらから発信するように心がけるようにしましょう。