株主総会はオンラインとのハイブリッドに昨年スタートした新型NISAでは、成長投資枠を使って個別株を購入した人も多いのではないでしょうか。株主総会の時期になると株主には総会の案内が届きますが、近年ではオンラインでの参加も可能な企業も増えてきました。経済産業省は、新時代の株主総会プロセスの在り方研究会による「ハイブリッド型バーチャル株主総会の 実施ガイド(案)」を公開しています。オンラインでの株主総会のシステムを提供する企業も増えてきて、今後はオンラインを併用したハイブリッド株主総会が主流になっていくのでしょう。 もう一つ注目の記者会見、ホンダはオンラインで実施フジテレビが大騒ぎをしているまさにその頃、12月に日産とホンダは事業統合に向けた会見をしたかと思ったら2月には破談会見。日産の内田社長はリアルで会見を行いましたが、ホンダの三部社長はオンラインで会見(三部社長が先に会見)を行いました。この会見の様子はYouTubeで見ることができます(3月25日時点)。YouTubeの会見を見るといくつかの注目すべき点があります。まず、三部社長の話が終わり質疑応答に移る際に、司会者から「事前にご案内いたしましたzoomからご質問お願いします」とあるので、アクセス情報が個別にメディアや記者に送られていたのでしょう。記者を対象とする会見自体はzoomで行われ、YouTubeは別カメラで撮影してLIVE配信したと思われます。「質問される際はカメラとマイクをオンにしていただくようご協力お願いします」、「質問する際にはお手元の挙手ボタンにてお知らせください」と進行役が促すと、その手元には挙手した人の一覧が表示されているのか、社名と名前を読み上げて指名しています。指名された記者の質問の声もYouTube画面で明瞭に聞き取れます。質問者は大手新聞社やテレビ局といったオールドメディアの記者。会見自体は正味30分ほどで制限時間となり、混乱することもなく終了しました。案内が届いたメディア・記者は経団連や自工会記者クラブなどのお行儀の良い会員メディアだったのでしょう。YouTubeのコメント欄とともに、チャット画面もそのまま残っていますが、おおむねホンダには好意的な書き込みが多いようです。 様々な問題提起の場となったフジテレビの会見新製品発表会や映画やドラマの新作発表会、知事や市長の定例会見に企業不祥事の謝罪会見。ほぼ毎日、日本全国どこかで記者会見が行われています。記者会見自体は珍しいものではありませんが、今年に入ってフジテレビが実施した2つの記者会見は、様々な理由から注目され、その開催の仕方に批判が噴出しました。1月17日に行われた会見は、社長定例会見の前倒しという方便で記者クラブだけを対象に、しかもテレビ局でありながらテレビカメラが入ることも認められない非公開での開催でした。誰の目にも「逃げ」の姿勢が鮮明なこの会見はさまざまな批判を浴び、スポンサーがいっせいにCM差し止めに動きました。続いて1月27日に開いた2度目の会見では、1度目の反省から基本的に参加メディアに制限を設けず、フリーのライターやYouTuberまで出席することとなり、質問も玉石混淆で会見は10時間半にも及ぶことに。ついにはSNSでトイレにも立てず高齢なフジテレビの役員が可哀想だと同情する投稿まであったということです。 記者会見もオンライン開催はじわり拡がっているコロナ禍以降は、うち合わせや会議もオンラインで実施することが普通になっています。出張も減り、移動にかかる時間やコストを大幅に削減している企業もあります。記者会見もプレゼンや会議の様なものだと捉えれば、不祥事などで開催される謝罪会見を除けばオンラインで実施する事への抵抗はさほどではないでしょう。既にオンライン記者会見のパッケージサービスを提供する企業がいくつも登場しています。ホンダの三部社長の会見のような立て付けであれば、会場費も必要ありません。会場費や設営費などのコストを削減できますし、参加者にとっても移動にかかる時間や交通費も不要となるため、より多くのメディアに参加してもらうことが可能になります。問題は、オンライン会見に参加できるのは誰か?ということになります。たびたび海外からも批判される記者クラブですが、このような閉じた会員を対象にするのならば簡単です。しかし、フジテレビの2回目の記者会見の様に“誰でも”参加可とすると、オンラインの会見であっても混乱するでしょう。質問するつもりもないのならば、ライブ中継をチェックすれば充分です。自己主張や糾弾をして承認欲求と自己顕示欲を満足させる場ではありません。なんらかの制限や参加資格を設ける必要はあるでしょう。極端な例ですが、参加料を取る会見が開催されたこともあります。本庄保険金殺人事件の容疑者が、1999年頃自分の店を会場にし、記者1人に対して3,000~6,000円の入店料を徴収するという、実質有料の記者会見を開いていました。オンラインであっても事前購入チケット制の会見もあり得なくは無いことです。記者会見を頻繁に行うような企業でしたら、メディアや記者のリストも整理されているでしょうから、オンラインでの会見でも案内先に迷うことはないでしょう。そのようなリストがない場合は、PR会社などに相談するのも一つの方法です。 オンライン会見での注意点これから拡がっていくと思われるオンライン記者会見ですが、注意も必要です。まず、通信環境や機材トラブルなどにより、会見が中断したり、映像や音声が乱れたりする可能性があります。フジテレビの会見の様に長時間となっても大丈夫なように、技術的な安定性が求められます。続いて、質疑応答の難しさ。オンラインでは、発言のタイミングや相手の表情が分かりにくく、質疑応答がスムーズに行かない場合があります。フジテレビの会見では、記者との間で激しいやり取りやヤジのような不規則発言もありました。オンラインでは参加者全員がマイクを持っている状態ですので発言をどのようにコントロールするかが重要になります。主催者側(進行役)が参加者のマイクのオン・オフができるプランを利用することが必須です。オンライン会見の実施にあたっては、事前の準備やリハーサル、技術的なサポート体制などをしっかりと整え、参加者にとって分かりやすく、スムーズなコミュニケーションが取れるように配慮することが重要です。忘れてならないのは、一般向けにライブ配信をするのが普通になった今となっては、発言はしないながらも多くの人が会見の様子を見ているということです。ライブ配信はどのように行うのが良いのかもこれからの課題となってくるでしょう。