カムチャッカ半島沖地震の後に相次いだ火山の噴火ここ数年、毎年のように梅雨の終盤、7月上旬に発生することが多かった夏の集中豪雨。しかし今年は7月には発生せず、むしろ晴天続きで渇水による農業被害が心配されていました。それが一転、1か月遅い8月の3連休に九州や能登半島で線状降水帯が発生し、大きな被害をもたらしました。ゲリラ豪雨による都市部の内水氾濫も頻発しています。連日の猛暑・酷暑ばかりが話題に上がる中、7月30日にカムチャッカ半島沖で発生した大地震で太平洋沿岸地域に広く津波警報が発令され、海岸近くでは避難が呼びかけられました。人的被害はありませんでしたが、この津波で牡蠣の養殖筏に被害が出るなどしました。この地震の後、日本ではあまり話題になりませんでしたが周辺で火山が相次いで噴火しています。巨大地震の後に火山が噴火することは過去にもあり、日本では宝永地震の後に富士山の大噴火「宝永噴火」が起きています。 今も常時観測対象の火山が50もある火山国日本日本は世界有数の火山国であり、環太平洋火山帯の一角に位置しています。気象庁(火山の監視)によれば、過去1万年以内に噴火歴がある、または現在も噴気活動が確認されている「活火山」は111座存在し、そのうち50火山が常時観測対象として24時間体制で監視されています。広域で多くの人が避難することとなった火山噴火では、伊豆大島三原山の大噴火(1986年、たまたま乗り合わせた飛行機の機窓から、夜の暗闇の中溶岩が赤く流れるのを目にしました)、三宅島(2000年、全島避難解除になったのは2005年)の全島避難が思い出されます。この夏休みに公開された「劇場版TOKYO MER 走る救急救命室」の舞台は火山島でした。離島以外では火砕流で多くの犠牲者を出した雲仙普賢岳(1991年、私の友人の新聞記者も現場に居合わせましたが、幸いなことに無事でした)、溶岩ドームが日々巨大になって行った有珠山(2000年)などが記憶に残ります。2025年現在も複数の火山で活動が確認されており、霧島山(新燃岳)では噴火が継続、桜島では断続的な小規模噴火が発生しています。また、草津白根山(湯釜付近)では噴火警戒レベル2が継続中で、火口周辺規制が敷かれています。近年は離島の火山も含め小規模な噴火や噴気活動が頻発しており、大規模噴火がいつ発生してもおかしくない状況です。特に、1707年に大規模な宝永噴火を起こした富士山については、首都圏に甚大な影響を与える可能性が指摘され、内閣府や地方自治体が被害想定(富士山ハザードマップ2023改訂)を公表しています。日本社会は、火山災害が地震や台風と並ぶ「主要な自然災害リスク」であることを再認識する必要があります。 火山噴火による被害の特徴溶岩流や火砕流による集落やインフラの破壊、噴石による人的被害などの直接被害だけに留まらず、降灰により都市部では交通機関の停止、上下水道の詰まり、電気機器の故障、視界不良などの発生が想定されます。降灰後の降雨により土石流が発生し、下流域に長期的被害をもたらす可能性もあります。8月2日に放送されたNHK「ブラタモリ富士山SP」では、宝永の大噴火の灰で埋まった須走の村の痕跡を確認。噴火で村を捨てて逃げた村人は噴火が治まってから戻り、3mもの灰に埋まった村を掘り起こすのではなく、その上に再び村を築いたということでした。火山の噴火により埋まった街としては、ベスビオ火山の噴火により埋もれたナポリの世界遺産ポンペイが知られています。降灰や大気中に長期間浮遊する火山灰による被害も深刻です。農業分野では葉の損傷や光合成阻害による収穫減少が深刻になります。海外の事例としては、2010年アイスランドのエイヤフィヤトラヨークトル火山噴火により欧州の航空網がほぼ1週間にわたり麻痺し、世界的に数千億円規模の経済損失が生じました。日本でも同規模の降灰被害が発生すれば、首都圏や関西圏の航空・物流が停止し、グローバル経済に波及することは避けられません。火山災害の特徴は、被害が噴火口周辺にとどまらず、広域かつ長期的に影響を及ぼす点にあります。三宅島の全島避難は5年にも及びました。企業にとっての主なリスクと備え火山活動は、地震や洪水と比べても特有のリスクを企業に突き付けます。遠く離れていても、道路・鉄道が使えなくなり空港が閉鎖されることで、製造業や流通業は原材料や製品の輸送が不可能になります。特に自動車産業や電子機器産業は「ジャストインタイム方式」に依存しており、短期間の物流停止でも大きな打撃を受けます。火山に近い所に拠点を構えていると、大量の降灰により工場やオフィスは操業できなくなります。精密機器工場では微細な火山灰が設備に深刻なダメージを与える可能性が高くなります。交通麻痺や避難指示によって、従業員が出社できない、あるいは帰宅できない事態も生じます。これは特に首都圏での富士山噴火想定において重要なリスクです。また、噴火した火山の周辺は「危険地域」という印象を長期的に与え、観光需要を急激に冷え込ませます。過去の有珠山や雲仙普賢岳の噴火では、観光客数が数年単位で減少し、地域経済が長期的停滞に陥りました。金融市場でも観光、航空、物流関連株が急落する可能性があります。 BCP策定・見直しと従業員の安全確保をBCPに火山噴火を想定した対応は記載されているでしょうか?降灰が想定される拠点では、避難マニュアルの整備、マスクや飲料水の備蓄、安否確認システムの導入など、従業員の安全を守る仕組みを日常的に準備しておく必要があります。サプライチェーンを持つ企業は、主要拠点の立地とリスクを洗い出し、代替輸送手段や在庫戦略を検討する必要があります。富士山に限らず、大噴火が起きれば近隣の都市部への降灰や空気中を舞う火山灰の影響で交通が麻痺する可能性があります。在宅勤務やクラウド活用による業務継続を可能とする体制づくりが重要となります。富士山噴火のシナリオが示すように、首都圏の機能が停止すれば企業活動のみならず日本経済全体が揺らぐ可能性があります。企業は火山噴火を「例外的なリスク」ではなく「現実的な経営リスク」と捉え、事業継続計画・従業員保護・情報収集体制を強化することで、被害の最小化を図る必要があります。最後にこの原稿を書き上げた直後に、東京都と内閣府が相次いで富士山噴火に関する特設サイト・動画を公開しましたのでリンクを貼っておきます。東京都 Tokyo 富士山降灰特設サイトhttps://www.fujisan-kouhai.metro.tokyo.lg.jp/内閣府 富士山の大規模噴火と広域降灰の影響 全体版https://wwwc.cao.go.jp/lib_012/kohaimovie.html