私の趣味の一つは渓流釣り(flyfishing)で、必然的に人里から離れた山にも入ります。九州には熊がいないので気にする必要は無いのですが、本州での釣りは熊鈴が必需品です。ずいぶん前ですが東京都あきる野市の秋川上流で釣りをしているときに、近くで熊の目撃情報があり、パトカーが走ってきて川からあがって屋内や車に入るように指示されて一時避難したことがあります。その近くでは今年も熊の目撃情報が複数あります。過去最悪の熊による人身被害今年は熊による人身被害が過去最高となっています。11月に入ってからは熊による被害のニュースを見ない日はありません。いかにも熊が棲息しているような山深いところだけでなく、街中にまで現れています。紅葉を見に出かけた上高地や白川郷のような観光地にも熊注意の看板があちこちに立っていました。盛岡市では街中心部で度々熊が目撃され、札幌では円山動物園の敷地内で、秋田県能代市では白昼イオン店内に熊が侵入して駆除されています。青森では海を泳いでいた熊が駆除されました。山や川からだけでなく、海からも熊が人里に侵入するようになると、もうどこも安全とは言えません。各地の大学や高校・中学、さらには幼稚園や保育園の敷地内にも侵入が確認され、通学や通園にまで影響が出ています。都道府県や自治体レベルの対応では限界と、とうとう政府が省庁をまたいだ「クマ被害対策施策パッケージ」を策定し公表するに至りました。今年はブナや樫などの実が不作だといい、十分な栄養を蓄えられず冬眠の準備に入れない個体もいるようです。更に問題になっているのが人間の生活圏で食べ物が容易に手に入ることを学習し、人間を怖がらなくなったアーバンベアと呼ばれる熊です。山が雪に覆われるような季節になっても冬眠せず、アーバンベアが街を徘徊する恐れさえ有ります。さすがに東京23区や大阪、名古屋など熊が棲息する山から離れた大都会では心配しなくても良さそうですが、東北や北海道だけでなく、東京都でも八王子や青梅では山の麓で熊の目撃情報が多く寄せられていますので、街といえども山が近い所では安心できません。この冬、さらには来年以降も熊が街中に出没することを想定しなければならない状況です。街中で子熊も多く目撃されています。そのまま成獣になって人を恐れないアーバンベアとなったら…家族や従業員、生徒などを危険な目に遭わせないためにも備えが必要です。自治体が発表する熊出没状況の確認まず、周辺で熊が出没しているか確認してみてください。東京都であれば「東京都ツキノワグマ目撃等情報マップ~TOKYOくまっぷ~」にまとめてあります。他の自治体でも熊の目撃情報などをまとめたマップを提供しています。Yahoo!ニュースには防災士の栗栖成之さんが作成したリンク集「【クママップ総合版】全国の熊(クマ)出現情報マップのリンクページを作ってみた!」を上げてありますので、お住まいの都道府県の情報をチェックしてみてください。近隣で熊が出没しているのであれば、従業員やお客様、学生・生徒の安全を確保しなければなりません。危険が予見されているのに対策を怠り、人身被害が発生すれば不作為を責められることになります。加えて、毎日周辺の出没情報をモニタリングする体制をとる必要があります。自治体の防災情報メールやLINEが受け取れるように登録して、最新情報を共有する体制を作っておきましょう。熊と遭遇しない、侵入させない緊急対応教育と敷地内の環境チェック街中では日中急に襲われることは想定しづらいですが、熊を目撃したり出没情報を受けることは今後あり得ます。その後の行動が重要になります。熊に遭遇した際の対応については、テレビ報道やネットでも様々に紹介されています。背中を向けず目をそらさない、走らない、大声を出さないが基本行動とされています。自らが安全な場所に避難するだけでなく、お客様や従業員、学生・生徒、子どもや高齢者を避難させなければならない場面も想定しなければなりません。熊の出没情報を受けた際の避難行動・誘導をシミュレーションし、避難場所の指定と安全確保措置の確認を全員でしておきましょう。民家の柿の木に登って実を食べ続ける熊の映像が何度もニュースに流れたように、熊は餌を求めて人里に降りてきます。生ゴミや餌になるような物を外に置かないこと、工場や倉庫などの周辺に熊が潜みそうな場所を作らず見通しを確保。フェンスや壁の破れや隙間が無いようチェックも怠ってはなりません。特に、学校や幼稚園・保育園、高齢者施設などは絶対に熊を侵入させないよう入念なチェックが必要です。今年、熊がやってくる危険があると、自然観察教材として育てていた柿の木を切った学校もありました。早朝の通勤・通学は注意が必要熊に襲われるのはまだ静かな早朝が多いようです。私は動物の専門家ではないのでわかりませんが、警戒心が緩んでいる時間帯に突然現れた人に驚いて襲ってくるのでしょうか?いずれにしても業態によっては、あるいはシフトによって早朝まだ薄暗い時間に出勤しなければならない人もいるでしょう。クラブ活動で早朝練習ということもあるかもしれません。熊が出没するような地域であれば、早朝のシフトや通学を避ける、通勤・通学経路の安全確保(徒歩や自転車禁止)が求められます。11月も後半になると東日本では16時を過ぎると暗くなります。日没後の下校はできるだけ避けるようにし、クラブ活動にも制限をかける事も考えなければなりません。熊の出没が想定されるならマニュアルも今後も熊の出没が想定できるエリアでは、熊対策のマニュアルの整備が必要です。近隣で熊の出没情報があった場合、施設の扉を閉める、自動ドアを手動に切り替える、屋外での活動を停止する……従業員やお客様、学生・生徒への連絡や避難誘導などそれぞれの施設や環境に応じたマニュアルを策定し、シミュレーションと訓練もしなければなりません。センサーや防犯カメラの設置・増設などの設備投資も必要になるかもしれません。熊だけでなく、猪や鹿、猿などの野生動物が都会に迷い込んでくる事例も増えています。ニュースで見る対岸の火事ではなく、それぞれの環境で自分事としてとらえ、一度振り返ってみてはいかがでしょうか。不審者対策のシミュレーションとしても有効ですよ。