自転車にも「青切符」が導入される転換点2026年4月から自転車にも交通反則通告制度が適用されます。自転車でも信号無視(6,000円)、一時停止違反(5,000円)、歩道走行や逆走(6,000円)、ながらスマホ(12,000円)など、多数の違反行為に対して反則金の納付が求められるようになります。交通反則通告制度(青切符)が適用されるまでは、自転車でも交通違反をすると赤切符が切られます。あまり知られていませんが、これまでも歩行者や他の車両にとって危険性・迷惑性が高い悪質・危険な違反など、自転車での交通違反であっても赤切符を切られています。令和6年は、指定場所一時不停止21,833件、信号無視21,088件、その他8,643件、計51,564件も検挙されています。赤切符が切られると検察官による起訴・不起訴の判断や裁判を含めた一連の手続きへと移行し、罰金刑が確定すると前科もつきます。実際にはこれよりも遙かに多くの自転車による交通違反が発生しているのが現状ですが、警察官が自転車の交通違反を認めた場合のほとんどは現場で指導警告に留まってきました。自転車の違反が自動車免許点数への影響は?企業への影響は?自転車事故は今世紀に入って自動車事故の減少とともに右肩下がりで減っていましたが、令和に入ってからは年間7万件前後と横ばいで推移しています。一方、全交通事故に占める自転車関連事故の構成比や自転車対歩行者の事故の発生件数は増加傾向にあります(自転車交通安全サイト-事故違反の発生状況より)。事故の背景には自転車側の法令違反の多さがあり、自転車も「車両」として交通ルール遵守を徹底させる必要性が指摘されてきました。青切符の導入は赤切符の厳格な刑事手続きの負担を軽減し、違反処理を迅速・簡易化することで、実効性のある事故防止と交通安全の向上を図ることを目的としています。自動車での違反の場合は、違反すると反則金の支払とともに違反点数が加算され、免許停止や取り消し、更には免許更新期間に影響を及ぼすことがあります。これに対し、自転車での交通違反は運転免許の点数制度が適用されません。個人の自転車での違反が自動車の免許に影響することはないので、その意味では業務への直接的な支障は限定的です。しかし、宅配やフードデリバリー、顧客訪問など、業務の移動手段として自転車を使用している業態や企業は少なくありません。交通反則通告制度の認知・浸透は自転車を見る目を厳しくすることになり、企業にとっても無視できないリスクとなり得ます。業務中・通勤中事故における「使用者責任」これまで「軽微」と見なされがちだった自転車事故も、違反行為が明確化・可視化されることで、企業責任を問われやすくなります。従来、自動車と自転車の事故の場合は、自動車が一方的に悪い加害者という目で見られがちでした。例えば、止まれの標識がある路地から飛び出す自転車に驚く場面に遭遇することがありますが、自転車は明確な交通違反です。自転車も車両であり、自動車と同様に道路交通法が適用されることを教育・再確認し、交通ルール遵守を徹底しなければなりません。従業員が自転車で、業務中(外回り、配達、訪問等)や通勤中(特に会社が通勤手段として指定・許可・黙認している場合)に交通違反や事故を起こした場合、企業側の管理責任が争点化しやすくなります。自転車事故ではすでに、死亡・重度後遺障害事故に対して数千万円〜1億円規模の賠償を命じる判決があります。このため、自転車には自転車保険加入は不可欠です。併せて、会社で加入している賠償責任保険の保障対象の確認も必要です。通勤や業務に従業員個人の自転車使用を認めている場合には、自転車保険加入状況を把握し加入を義務づけることが望まれます。交通違反が原因で事故を起こした場合、業務中であれば企業に賠償責任を問われる可能性もあります(使用者責任)。十分な保険に加入していなければ、雇用主の企業が不足する補償を補填しなければならなくなるリスクがあります。従業員の違反が企業評価の低下に繋がる一時期、フードデリバリーの自転車のマナー違反や交通違反がSNS上で指摘され話題になったことがあります。背負いバッグのロゴや制服によって企業名が容易に特定されるため、個人の行為であってもブランドイメージに直結します。大阪や名古屋、福岡という中核都市では日常の移動で自転車の利用が多く、放置自転車も社会問題になっています。地方都市の工場や商業施設などでは、自転車通勤の従業員も少なくありません。仕事帰りに誘い合ってちょっと一杯ということもあり得ます。飲酒してそのまま自転車で帰宅すれば明確な飲酒運転です。「社員が違反常習」「危険運転をしていた」という情報が報道・SNSで拡散されれば、企業のコンプライアンス体制そのものへの不信につながります。正社員だけでなく、パート・アルバイトや派遣社員であっても外から見れば同じです。自動車だけでなく自転車利用の社内ルール整備を多くの企業では、自転車利用に関する明確な社内ルールや違反時の懲戒・指導基準が十分に整備されていません。今後は、自転車での違反や事故に対する社会の目も一層厳しくなります。懲戒処分を行う場合には、その妥当性や企業が指導義務を尽くしていたかなどが争点になりやすくなります。4月からの取締り強化を踏まえ、少なくとも以下の準備・対応が求められます。・自転車利用に関する社内ルールの明文化・業務・通勤での自転車使用可否の整理・自転車保険加入の義務化または確認・定期的な交通安全教育・交通ルール遵守の誓約・事故・違反時の報告フロー整備これらは単なる「努力義務」ではなく、事後的に企業責任を問われた際の防御策となります。4月の制度スタートまで限られた時間を有効に活用し、早期に対応を進めることが望まれます。