年末年始は有名人の結婚報告が恒例に年が明けたと思ったら、2026年もあっという間に2か月が過ぎました。年末年始はマスコミや出版業界は年末の特別進行を組み、テレビは事前収録の特別番組、週刊誌は合併号となることがほとんどです。2025年は御用納めとなる12月28日が日曜日だったため、行政機関も含め多くの企業や事業体で26日が仕事納めとなりました。経済活動もほとんど止まるので報道番組やニュースの枠も少なくなり、新聞も紙面を減らします。ここ数年、この「報道の空白」のタイミングを好機と捉え、有名人の結婚・入籍あるいは離婚報告が恒例になってきました。有名人とはいえ、結婚や離婚という極めてプライベートなイベントですから、記者発表や会見などせず、できれば静かにやり過ごしたいと考えるのも人として当然です。この年末年始も、長澤まさみさんの結婚報告は大きな驚きをもって受け止められました。吉岡美穂さんとIZAMさんの離婚報道では一部の紙面で「里穂」と誤記され、吉岡里帆さんが「結婚していないと思っていたのですが先に離婚報道が出ました…とほほ」とInstagramでコメントしていたのには思わず笑ってしまいました。しかし同じ「年末年始」というタイミングでも、企業不祥事への向き合い方となると話はまったく別です。マスコミの休みを狙ったかのような「ご報告」2025年12月30日、この年末年始の報道機関の活動空白期間を狙ったと思われる「ご報告」がエッグフォワード株式会社から配信され、一部で強い反発を招きました。問題の「ご報告」は、12月19日に東京・神奈川や大阪はじめ全国の労働局から一斉公表されたリスキリング助成金の不正受給問題についてのものです。その不正受給総額は17億とも20億弱とも推計されています。通常この種の事案では、助成金の申請をした企業名が公表されるものですが、どの労働局の公表文書にも共通して記載してあるのは「不正受給に関与した訓練実施者」としてのエッグフォワード社の名前です。各労働局から公表文書には別添資料として【事案の概要】が図入りで説明してあり、エッグフォワード社が「不正のスキームを考案し、訓練委託元企業に提案するなど、不正受給に関与していた」と明記されています。同社主導の不正と判断されたことが読み取れます。12月30日にエッグフォワード社のサイトに掲載された「ご報告」(と同時にXにも同じ文書を投稿)は、木で鼻をくくったような内容です。全国の労働局が公表してから10日以上経過し、報道機関がほとんど動かない年末年始のタイミングを狙っての形だけのものです。こんな「ご報告」なら、公表された19日当日、遅くとも翌日には出せたはずです。このタイミングで出すという選択自体が、「追求を逃れてやり過ごしたい」という姿勢を強く印象づけるものでした。説明を重ねても埋まらない違和感さらに10日ほど経過し、年をまたいだ1月9日に再び「ご報告」とする文章がエッグフォワード社のサイトに掲載されました。今回の報告には、「事案」として経緯が、さらに「背景」として代理店から支払われる紹介料が実質的に研修費の一部補填とみなされ、助成金受給の要件を満たさないという判定になったと書かれています。しかし、各労働局の公表資料では「訓練経費と同額を営業協力金の名目で入金」と明記されています。申請事業主に実質的な自己負担をさせず、助成金から訓練経費を回収するスキームだったと読むのが自然でしょう。このスキームについてはcokiの記事でわかりやすく解説してあります。公表された不正受給額は1社あたり数百万円から1,000万円規模(神奈川は1社で1千万円超)と高額です。助成額は最大で60%ですから、申請時の訓練経費は大幅に水増しされていた可能性が高く、研修内容や価格設定の妥当性にも疑問が残ります。このコラム原稿を執筆時点では、その後の報告や追加情報はありませんが、少なくともこのスキームに乗って助成金を申請した企業には返還義務が生じています。助成金の大部分が実質エッグフォワード社に渡っていたのであれば、返還額は十数億円規模になる可能性もあります。問題は「不正」そのものではない今回本コラムでエッグフォワード社の事例を取り上げたのは、不正受給の是非を断罪するためではありません。労働局の公表資料とエッグフォワード社の主張は食い違っていますし、どちらが正しいのかを外部から断定することはできません。リスクデザインとして指摘したいのは、不祥事発生時の姿勢です。公表のタイミング、説明の仕方、そして何より「逃げている」と受け取られる対応は、企業の信頼を決定的に損ないます。少し古い話ですが、2018年の日本大学アメフト部の悪質タックル問題、アメフト部内田前監督と井上コーチ(いずれも当時)の緊急記者会見を思い出します。マスコミに会見のお知らせFAXが届いたのは当日の午後7時過ぎ、受け付けは7時半から、開始は8時からというものでした。しかもそのFAXには会見場所も記されていなかったようです。会見も、言い訳と弁明に終始しました。質問に対しても真摯な回答はなく、ただただ日大の不誠実な姿勢を印象づけただけでした。クライシス・危機対応の基本は「逃げない」ことクライシス・危機対応では初動が重要だと繰り返し言われます。しかし、初動を誤れば、その後の対応すべてに悪影響を及ぼします。最も基本的で、最も難しいのは、目の前の現実から目を背けず、逃げないことです。年末年始や週末金曜日の夕方など、「マスコミの空白時間」を狙うような発表の仕方。それは、企業のリスク感度と倫理観、そして本質を如実に映し出す鏡なのです。