国民的人気のりくりゅうと高市首相が話題を2分冬季オリンピック史上最多のメダルを獲得して終わった、ミラノ・コルティナオリンピック。2月24日にはフィギュア選手団が帰国し、大逆転で金メダルを持ち帰った「りくりゅうペア」の和やかな会見は終日報道番組で流れ、日本を明るくしていました。時を同じくして国民的人気の高市首相が、自民党の全衆院議員315人に「選挙のねぎらい」として3万円相当のカタログギフトを配布したことが明らかとなり、波紋を広げました。25日の参院代表質問で、高市首相はカタログギフトを配ったことを明らかにした上で違法性を否定しましたが、「違法ではないとしても適切とは言えない」という評価が広がっています。この日のニュース番組や新聞報道などでは、りくりゅうペアの会見と高市首相のカタログギフト問題、この2つの話題で持ちきりでした。石破首相がダメで高市首相なら許される?思い起こせば1年前の3月、石破前首相が自民党衆院新人議員15人にポケットマネーから1人10万円分の商品券を配って問題となりました。石破前首相は批判を受け「大変なご迷惑をおかけした」と謝罪し、後に全員が商品券を返却しました。僅か1年前のことですから、多くの国民はまだよく覚えているはずです。高市首相が配ったのは一人当たりの金額は3万円に減ったとは言え、石破前首相の総額150万円に対して約1000万円!まるで石破前総理はダメだったけど、「人気がある私(高市)なら許されるのよ!」と鼻で笑っているかのような行為です。投票に行った有権者としては馬鹿にされている感覚さえ覚えます。国民感覚では理解に苦しむ弁明高市首相は、政治資金規正法など法令上問題は無いと主張しています。自身のX(旧ツイッター)で、「当選へのねぎらいの気持ちを込め、全員に(自身が支部長を務める)奈良県第2選挙区支部として品物を寄付した」と説明し、個人の寄付ではないので政治資金規正法には抵触しないとしています。石破前首相は個人が渡したのでアウトだったけれど、高市首相は(自分の名前だけど)支部からの寄付(支出)だからOKと主張しています。政治資金規正法の縛りがあるとは言え、一般人の感覚なら、ねぎらいの気持ちを表すのなら石破前首相の方がストレートで好感が持てます。高市首相のやり方は、やましいところがあるから迂回させているんだという風に見えてしまいます。また、Xへの投稿では「今回の支出には、政党交付金は一切使用することはありません」としています。しかし、支部には本部から政党交付金が分配されているといいますから、支部からの支出に政党交付金(税金)が使われていないとは言い切れないはずです。そもそも客観的に見れば何故「奈良県第2選挙区支部」のお金で全衆院議員にねぎらいの品を贈るのか理解に苦しみます。支部に在籍しない議員への贈り物に1000万円近くも支出していますが、支部の政治活動というには無理があります。高市首相のねぎらい方は潜脱行為そのもの危機管理とコンプライアンスの観点から見ると、この問題は典型的な「潜脱行為」の構造を持っています。潜脱行為とは、法令の文言には抵触しないものの、その趣旨を実質的に回避する行為を指します。言い換えれば、「合法の外観を持つ不適切行為」です。企業不祥事の分析では、むしろ明確な違法行為よりも重大なリスクとして扱われることが多い概念です。「お騒がせしているけれど、法には触れていないので問題ない」。企業のスキャンダルや不祥事の際、謝罪会見でよく聞くフレーズです。しかし、会見でこう言い放った企業は、その後に必ずマーケットや消費者から厳しい目を向けられます。現代のコンプライアンス概念は、単なる法令遵守を超えています。現在では「法令・社会規範・企業倫理への適合」が求められると理解されています。合法かどうかは出発点に過ぎず、「社会からどう見られるか」という視点が不可欠です。この意味で潜脱行為は、最も典型的なコンプライアンス逸脱と位置づけられます。レピュテーションリスクに繋がる潜脱行為現代の企業活動において、最大のリスクは違法行為ではなく「合法に見える不誠実な行動」といえます。違法行為は指摘されれば直ちに是正されますが、潜脱行為は組織内部で合理化されやすく、長期間にわたり信頼を侵食し続けるからです。その結果、ある時点で一気にレピュテーション危機として顕在化します。形式的適法性を背景とした判断は短期的には合理的に見えますが、長期的には信頼リスクを増幅させる可能性が高いのです。「合法かどうか」ではなく「社会からどう評価されるか」で意思決定を行う必要があるということです。潜脱行為を防ぐためには、組織の目的や価値観に基づく意思決定、ステークホルダー視点の評価、そして異論を表明できる組織文化が不可欠になります。コンプライアンスの本質は「違反をしないこと」ではなく、「信頼を維持すること」にあるからです。これまでも政治家の潜脱行為は度々報じられてきました。しかし、いつの間にかうやむやになることも多く、今回も高市首相の支持率や国会運営にさしたる影響は出ないのかもしれません。しかし、民間企業では「首相も同じようなことをやってるじゃないか!」と交通違反を検挙されたときの逆ギレドライバーのような言い訳は認められないのです。