高校を卒業すれば酒もタバコもOK?お恥ずかしい話ですが、昭和の高度経済成長期に育った私は、高校を卒業すれば酒もタバコも大手を振って許されるものだと思っていました。当時、大学進学率は現在ほど高くなく(約25%)、中学時代の同級生の多くは高校卒業後すぐに就職して社会人になりました。高校を卒業すると、同級生たちの中には酒を飲み、タバコを吸う者もいました。それを特別問題視する空気もありませんでした。そんな私が「酒もタバコも20歳から」という法律を初めて実感したのは、大学入学直後のことでした。従兄弟が運転する車で出掛けた際、飲酒検問に遭遇しました。運転していた従兄弟は素面でしたのでもちろん問題ありませんでしたが、私は直前まで酒を飲んでいました。年齢を聞かれ、何の疑問もなく「18歳です」と答えたところ、警察官から「未成年者の飲酒は禁止されています」と注意を受けました。逮捕されるようなことはありませんでしたが、非行青少年摘発なんとかという書類への署名を求められ、そこで初めて「18歳では酒もタバコも認められていない」と知ったのです。成人年齢が18歳になっても、社会人として完成したわけではない2022年4月から成人年齢は18歳に引き下げられました。契約などを自らの意思で行える範囲は広がりましたが、飲酒や喫煙は現在も20歳からです。当時の私は高校まで進学校に通い、受験勉強に多くの時間を費やしていました。社会のルールや生活に必要な知識を学ぶより、試験問題を解くための知識を身につけることに集中していたのです。自分の事を棚に上げて言うのもお恥ずかしいですが、この経験から分かることがあります。18歳は法律上、大人として扱われる年齢になったとしても、社会人として必要な知識や判断力、経験が十分に備わっているとは限らないということです。「成人」と「成熟した社会人」は同じ意味ではありません。企業は、この違いを理解した上で若手社員を迎え入れる必要があります。新卒社員の3人に1人が3年以内に離職する現実厚生労働省が公表している「新規学卒就職者の離職状況」によると、2022年3月卒業者の就職後3年以内の離職率は、新規高卒就職者で37.9%、新規大学卒就職者で33.8%でした。つまり、同期として入社した社員の約3人に1人が、3年以内に会社を去っている計算になります。離職率が高い業種を見ると、高卒・大卒ともに上位には宿泊業、飲食サービス業、生活関連サービス業、教育、医療・福祉、小売業などが並びます。学歴だけで離職傾向が大きく変わるわけではありません。しかし、高卒社員と大卒社員では、入社時点で経験してきた時間が約4年異なります。この4年間は単なる年齢差ではありません。大学生であれば、講義、アルバイト、サークル活動、就職活動、一人暮らしなどを通じて、社会との接点を増やす機会があります。一方、高校卒業後すぐに就職する場合、18歳という年齢で初めて本格的な組織社会に入ることになります。もちろん、高卒社員だから未熟、大卒社員だから成熟しているという話ではありません。重要なのは、企業側がその違いを理解して受け入れることです。高卒社員が1年で大きく成長する組織私自身、大学卒業後、当時はまだベンチャー企業だった日本リクルートセンター(現リクルート)に入社しました。入社して驚いたことがあります。同期入社では大卒者が半数以下で、高卒や女性の先輩社員が数多く活躍していました。中には、当時の自分より年下にもかかわらず、責任ある仕事を任されている先輩もいました。そこでは、学歴や年齢ではなく、仕事の成果や成長度合いで評価されていました。特に印象的だったのは、高校を卒業したばかりの社員が、1年後には大卒社員と肩を並べて仕事をしていたことです。その背景には、二つの仕組みがありました。一つは採用です。学歴や経歴だけを見るのではなく、その人の可能性や意欲を見極めて採用していました。もう一つは教育です。OJT(On-the-Job Training)とOff-JT(研修など)を組み合わせ、仕事を任せながら必要な知識や考え方を身につける仕組みが整っていました。そして何より重要だったのは、上司や先輩からの細かなフィードバックでした。「何ができるようになったのか」「次に何を期待されているのか」「自分の仕事が組織にどう役立っているのか」こうした情報が継続的に与えられ、更には「自分はどう考えるか」「何ができるか」を求められることで、社員は成長実感を持つことができました。レッテルではなく、一人一人を見る現在は、働き方改革やハラスメント防止の観点から、若手社員への接し方に慎重になる企業も増えています。しかし、必要なのは過剰に距離を置くことではありません。特に高校卒業直後の18歳社員は、社会経験が少ない分、会社で初めて学ぶことが数多くあります。現代の若者はデジタルネイティブであり、インターネットやSNSを通じて大量の情報に触れています。一方で、フィルターバブルやエコーチェンバーによって、偏った情報だけを受け取り、自分の中で「正しい」と思い込んでしまうリスクもあります。企業が教えるべきなのは、業務手順だけではありません。社会人としての常識、組織で働く意味、相手への配慮、情報との向き合い方、コンプライアンス意識なども含まれます。高卒社員へのフォローは「特別扱い」ではありません。社会に出るタイミングが早い社員に対して、企業が果たすべき教育責任なのです。18歳で入社した社員も、数年後には組織を支える貴重な戦力になります。その成長を支える仕組みを持っているかどうかが、これからの企業の人材リスク管理を左右するのではないでしょうか。