県の話題を超え、全国で注目される福岡県議会の醜聞福岡ではどうしてこんなに全国を賑わす事件が頻繁に起こるのだろうと、時々情けなくなります。特に今年は福岡県議会が大きく揺れています。今年初めに、福岡県幹部職員らの互助組織が職員の給与から天引きした資金を使い、県議会正副議長らの政治資金パーティー券を購入していたことが発覚し、行政と議会の癒着が問題視されました。次に、県議会議員の公費による高額海外旅行問題(藏内議長自ら旅行と発言)。旅行を手配する業者とは随意契約を交わし、最初は予算内で契約を締結し、後で高額な内容に変更するという狡猾な手口。昨年1月に4人で出かけた5日間のハワイ旅行は、最初の契約額は97万円だったのに、最終的には651万円に膨らんでいます。2024年8月~25年8月に福岡県議会が行った海外視察(旅行)は7回。朝日新聞のまとめによると、当初契約金額の合計は756万円だったのに、最終的には2,250万円と約3倍にも膨らんでいます。金額も金額ですが、そのほとんどは報告書も提出されていない、実態としては観光旅行ではないかとの批判も出ています。住民が約1千万円の損害賠償などを請求するよう県に求める住民訴訟を起こしています。そして福岡県議会の醜態が全国に大きく知れ渡ることになった、県議会議長・副議長ポストを巡る金銭授受疑惑です。かつて議長を務めたこともある議員が、当時所属していた自民会派幹部から金銭を要求されて支払ったと会見を行いました。これに続き、同じく複数の正副議長経験者が自分も金銭を支払ったと名乗りを上げています。最初に明るみに出た県幹部職員の給与天引きによるパーティー券購入は、上納した金銭の回収手段になっていたと思われます。疑惑を否定するも、他県や行政職員へ飛び火も当初、県議会側は「第三者委員会」の設置を拒否し、福岡県弁護士会が選定した弁護士らによる全議員対象の調査会を立ち上げて9月までに問題をまとめるとしていました。しかし、福岡県の服部知事は透明性を担保するため、日弁連の指針に基づいた独立性の高い「第三者委員会」を設置し、調査を委ねることを決定しました。これを受け議会内外から第三者委員会設置を求める声が強まり、方針転換を余儀なくされた形で、県議会でも設置することになりました。一連の報道を受けて今、ネットだけでなくテレビや新聞などの報道機関でも、これは福岡県だけの話ではないのでは?と、古い体質のまま変わっていない他の地方議会や自治体との癒着や不正に目を向けようとしています。選挙で選ばれる議員が不正や不適切行為を働いた場合には、百条委員会や第三者委員会を立ち上げて疑惑の真相解明を目指します。しかし、議員には地方公務員法に基づく懲戒処分制度は適用されません。議会としての議員辞職勧告などを議決するに留まります。福岡県議会が今後どのような動きを見せるかはわかりませんが、一方の行政、県庁職員についてはどうなるのでしょう?行政職員には「懲戒処分」という制度がある地方議会の議員は住民による選挙で選ばれる特別職であり、一般の地方公務員とは法的地位が異なります。そのため、不祥事が発覚しても議会が懲戒免職や減給などの処分を行うことはできません。議会として取り得る措置は、辞職勧告決議や役職辞任勧告など、政治的・道義的責任を求めるものが中心となります。一方、県庁や市町村などの行政職員には、地方公務員法に基づく懲戒制度が設けられています。職員が法令違反や服務規律違反などを行った場合には、任命権者は事実関係を調査した上で、懲戒処分を行うことができます。さらに、多くの自治体では地方公務員法だけでなく、懲戒処分指針や標準例、非違行為(法律や規律、就業規則に違反する行為)ごとの量定基準などを整備し、処分の公平性と透明性を確保しようとしています。しかし、制度が整備されているからといって、公正な運用が保証されるわけではありません。むしろ実務では、職員は制度そのものよりもその運用の公平性を見ています。この運用にこそ大きなリスクが潜んでいます。「懲戒処分」は四種類しかない地方公務員法で定められている懲戒処分(第29条)は、戒告、減給、停職、免職の四種類です。人事院が示す懲戒処分の指針ページにも標準例として懲戒事由と処分の適用一覧表が示してあります。しかし実際の非違行為は極めて多様です。例えば同じ情報漏えいであっても、故意だったのか過失だったのか被害の程度はどの程度か本人は反省しているのか過去にも同様の事案があったのかなどによって責任の重さは違いますし処分も大きく変わります。各自治体では懲戒処分指針を策定していますが、多くは「標準例」に過ぎず、最終的な判断には相当の裁量の幅を持たせざるを得ません。仮に行政職員による同様の行為であれば、懲戒処分の指針に照らすと服務規律違反や監督責任、非違行為の隠ぺい・黙認などが問題となる可能性があります。最大のリスクは「規程」ではなく「運用」企業でも自治体でも、「懲戒規程を整備しているから安心」という考え方は危険です。実際には、前例に引きずられ適切な処分ができない世論や報道に左右され処分が重く(または軽く)なる幹部と一般職員で処分に差が生じる調査が不十分なまま処分が決定される処分理由を十分に説明できないといった問題が少なくありません。こうした運用上の不備は、職員からの不服申立てや訴訟だけでなく、組織への信頼低下という新たなリスクを生みます。処分より重要なのは「処分に至るプロセス」処分を適正に行うためには、あらかじめ懲戒規程や処分基準が整備され、職員に周知されていることが前提となります。近年は企業不祥事でも自治体不祥事でも、「処分が重いか軽いか」より、「どのような手続で調査し、誰が判断し、どのような基準で処分を決定したのか」が厳しく問われるようになっています。福岡県が県議会問題について、議会とは別に独立性を重視した第三者委員会による調査を進める判断をしたのも、まさに手続の公正性を確保するためです。企業でも自治体でも、懲戒規程そのものはどこも似ています。本当に組織の信頼を左右するのは、規程ではなく、その規程をどう運用するかです。不祥事対応は、処分を決めた瞬間に終わるのではありません。適正な調査、透明な意思決定、十分な説明責任まで含めて初めて、リスクマネジメントとしての懲戒制度が機能するといえるのです。